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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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【完全読み切り】燈

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 「いや〜久々に熱い戦いができた」
 彼はすっかりご満悦である。そうだろうか。同じ炎使いでありながら、最後のポケモン同士に大きな実力差があった。相手の圧倒的勝利である。はっきり言って、自分はこの青年に歯が立たなかった。
 「いや〜本当に強かったよ、君は」
 「…そうですか?」
 「何でそこまで落ち込むんだよ」
 「だって…私思いきり負けてるじゃないですか!どこをどう見たら私が強いなんて言えるんですか!」
 「…そんなことか」
 彼は相棒のブーバーンに薬を噴きかけながら答える。
 「キミのポケモンには死角がなかった。攻める隙が見つからず、正面からのガチンコバトルに持ち込むしかなかった。この俺に熱く火をともした、って言うことが俺にとって、満足な戦いだって思えるポイントなのさ」
 「…」
 「そういや、君はジムリーダーをやってるんだってね。キミに勝てるトレーナーなんて少ないでしょ」
 「…でも」
 「でも?」
 「一度自分よりすごく年下の少年に負けました」
 「…年下の少年か」
 彼はいきなり笑い出す。
 「…俺と同じような経験があるんだな。俺も、まだ10歳くらいの女の子に負けたことあるよ」
 「…!」
 「正直、実力の違いを感じたときって何度もある。それは仕方ないさ。常に上に立つことはできない」
 彼はそこで言葉を一度切って、彼女の顔を見つめる。
 「…だけど、それが面白いんじゃないか」
 「!」
 「自分を熱くさせてくれるトレーナーとポケモンがいる。もっとこっちも、最大級の火力で迎え撃とうと努力できる。こっちが強くなる理由を与えてくれる。それはうれしいことじゃないか」

 #

 アスナの滞在も終わり、帰る頃になった。。
 ついにシーギャロップに乗り込み、向こうに見える燈山を眺める。
 「コンちゃん、来てよかったね」
 「いい出会い、ってことでか?」
 「…!もう、からかってるの?」
 「いいじゃないか。あいつは確かにいい男だと思うぜ」
 キュウコンに自分の心を見透かされたようで、彼女は少し頬を赤らめる。でも、彼女は考えていた。ポケギアに登録した、老人でないほうの電話番号を見つめて。
 
 あの青年に、もう一度会いたい、と。