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王子様、大激怒

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ベルゼブブは佐隈とともにエレベーターで一階へと下りる。
しかし、佐隈はずっと無言で、身を堅くして、エレベーターの隅に立っていた。その顔色は悪い。
エレベーターが一階に着いた。
外に出て、エントランスのほうに向かう。
ふと、ベルゼブブは歩く足を止めた。
背後で佐隈が立ち止まったのを感じたからだ。
振り返る。
佐隈がうずくまっている。
「……」
無理もないと思う。
複数の男たちにさわられて、ビルに一室につれていかれたのだ。
身体を押さえつけられ、服を脱がされた。
胸や足を触られたりもしたはずだ。
助けを求めたくてもできない状態にされて。
どれほど恐かっただろう、どれほどつらかっただろう。
佐隈を深く傷つけた男たちに対する怒りが、ふたたび、わいてくる。胸の中で炎がゆらめく。
だが、ベルゼブブは自分の心を静めた。
今、重要なのは、あの男たちへの復讐ではない。
重要なのは、眼のまえにいる佐隈、だ。
ベルゼブブは床にしゃがみこむ。
どうすればいいだろうか。
考える。
大丈夫なのか問いかけようとして、やめた。
たとえ大丈夫だという答えが返ってきたとしても、そんなのは嘘に決まっている。
ベルゼブブは手をあげた。
佐隈に触れようとする。
しかし、触れるまえに手を自分のほうに引き戻した。
今の佐隈は男に触れられたいだろうか。わからない。もしかしたら嫌かもしれないので、やめておく。
本当は、抱きしめて、もう大丈夫だと言いたいのだが。
ベルゼブブは身体の向きを変えた。
佐隈に背を向けることになる。
そして、穏やかな声で言う。
「さくまさん、私にあなたを背負わせてください」
返事は無い。
だが、ベルゼブブはなにも言わずにそのまま待った。
しばらくして、背中に佐隈の身体がそっと重ねられたのを感じた。
良かった、と思う。
心が少し明るくなった。
ベルゼブブは微笑み、佐隈を背負って立ちあがる。
エントランスのほうに歩いていき、やがて、ビルの外に出た。
ベルゼブブは人目をひく外見であるし、そのうえ今は人を背負っているので、いつも以上に視線を集めている。
けれども、気にせずに歩き続ける。
「……ベルゼブブさん」
佐隈が呼びかけてきた。
小さな、弱々しい声だ。
さらに佐隈は続ける。
「ありがとうございました」
その礼は、もちろん、助けられたことに対してだろう。
まだショックが消えていないだろうに、それでも礼を言ったのは、佐隈らしいと感じる。
「気にしないでください」
ベルゼブブは返事をする。
「私は自分のしたいことをしただけですから」
事実だ。
助けたかったから助けただけだ。
しかし、佐隈は黙っている。気にするなと言われても気にしてしまうのかもしれない。
ベルゼブブは少し考えてから、また、口を開いた。
「そういえば、私は今回の召喚のイケニエを、まだ、いただいていません」
イケニエを求める時間さえ惜しかったのだ。
いや、本当はイケニエなんかいらない。
依頼が無くたって、佐隈を捜し、助けた。
だが、それは言わずに、別のことを口にする。
「召喚したのはアクタベ氏ですが、イケニエは、あなたからいただいてもいいですか?」
「……はい」
助けられたことに対して恩義を感じているからか、佐隈は同意した。
「では、私は所望します」
ベルゼブブは背中のほうにいる佐隈に向けて、言う。
「あなたの作ったカレーを、大盛りで!」
明るい声で告げた。
すると。
返事のように、うしろから、佐隈がぎゅっと抱きしめてきた。






作品名:王子様、大激怒 作家名:hujio