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かんさつにっき

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「ぷろいせんの、かんさつ日記」 1年2くみ わか林けん太 



 ある日ぼくは森のおくで、いっぴきのふしぎな生きものをつかまえました。
 体は見たこともないような白と銀色で、ルビーのような赤い目をしています。
 ポケット図かんにものっていない、めずらしいその生きものを、ぼくは虫かごに入れて、うちにつれて帰ることにしました。


 きょ年、カブトムシをかうために使った大きなガラスの水そうに庭の土と、かれ葉をしきつめ、われた植木ばちのかけらで家をつくり、その中にいれてやると、その生きものは、おもしろそうにまわりを見まわし、飛んだり走ったり、かっぱつに動き回りはじめました。
 しばらくはそうやって、ひとりで歌ったり、ゆれたりしていましたが、3日ほどすると、だんだん元気がなくなってきました。

 しんぱいになったぼくは、その生きものを、近所に住んでいる本田さんのおじいちゃんに、見せに行きました。
「けんたくん、めずらしいものをつかまえましたね」
 ものしりのおじいちゃんは、水そうをのぞきこみ、
「これは、ぷろいせんのオスです。ふつうの図かんにはのっていない生きものですよ」
 本だなから取り出した、古い図かんを見せてくれました。
「でもぷろいせんは、飼うのには、てきしていないのです。本来は生命力の強い生きものなのですが、せまいところでひとりぼっちにさせておくと、だんだん弱って死んでしまいます。けんたくん、かんさつが終わったら、どうか森へ放してあげてください」
 おじいちゃんは、ぷろいせんは【ぜつめつきぐ種】なのだと教えてくれました。
 たいへんケンカの強い生き物で、知能も高くずるがしこいため、一時期はたいへんにはんえいしたのだそうですが、今ではもうめっきり見られなくなってきているのだそうです。
「ケンカも強くてかしこいのに、どうしてぜつめつしそうなの?」
「メスにきらわれやすいんです」
「えっ」
 いっしゅんなにを言われたのかわからず見上げると、おじいちゃんはなんともいえない顔で、おもおもしくうなずきました。
「そうぞうしく乱ぼうな性質に加えて、きゅう愛行動がとてもわかりにくく、なかなかはんしょくできないのです」
「…それは、もてないってこと?」
「たん的に言うとそういうことです」
「…おじいちゃん」
 ぼくは思わず言葉につまってしまいました。
「ぷろいせんはかわいそうなやつだね。ぼく、なんだか涙がでてきたよ」
「けんたくんは優しい子ですね」
「明日、もとの場所に戻しに行くことにするよ」
「はい。そうしてあげてください」
 おじいちゃんはやさしく笑うと、ぼくの頭をなでてくれました。


作品名:かんさつにっき 作家名:しおぷ