あたし、やめないわ。
古くから続く歴史あるこの町は活気に満ちていた。
人々は大通りに出て、露天ではたくさんの野菜や果物が積み上げられていた。
また、別の方向に目を向けると、生活必需品が店のテントからぶら下げられ、いったいどうやってその品物を飾っているのだろうか。
見事なものだ。
骨董品なども並べられ、たくさんの観光客がそれらを見入ってる。
その町には観光するところがいくつもあり。
さらに、彼女にとって最大にうれしいことであろう古い大きな図書館も見つかった。
その町の大きな宿で今日の少女たちは宿を取っていた。
(といっても、青年のほうは宿は必要ないが)
きっと、その図書館に行っていい掘り出し物でもあったのだろう。
その晩、少女はその宿でめずらしく少しお酒を飲みすぎたようだった。
そのまま一人で自分の部屋まで戻って行って。
二人いるには少し狭いその部屋の椅子に座って、今日骨董店で買ったばかりのタロットカードを繰っていた。
「ゼーロースー。いるんでしょう?出てきてよ。」
「あれ~?ばれちゃいました?酔っているのに、僕がいるってよくお分かりになりましたね。」
青年は部屋の宙にあぐらをかいた状態で現れた。
「あったりまえでしょ!
あんたがいるときって部屋の空気が淀んでいるのよ。」
「リナさん、そういう言い方ってないじゃないんですか?」
「ちょっと!何言ってるのよ!それくらい言ってあたりまえでしょ!
今何時だと思ってるのよ!だいたい!
ここは一人部屋よ!
それをこんな時間に人に断りもなく入って、あたしのこと監視しているのが悪いんじゃないの?
あたし、もう寝る前だかたら、パジャマも着ているでしょう?
・・・でも、許してあげる。」
そういって、にやりと笑うと彼女はカードを一つにまとめ、テーブルにトンと打ち、ふちをそろえて置いた。
青年はまたぎくりとした。
「今日のあたしは占い師なの!
せっかくだからあんたのことを占ってあげるわ!いいから座って!」
「リナさん。
だめですよ。僕に占いなんて。」
「なによ!永遠に生きるあんたの将来を占ってあげようっていってるのよ!
面白いじゃない!
どーせ占いじゃない!」
「いやですよ!リナさん!」
少女は嫌がる青年の手を取り、少女は無理やりに自分のテーブルの前へと座らせた。
「いいじゃない!減るもんじゃないでしょう!
占いは、上達するものよー。」
ふっふっふーーーこいつがこんなに嫌がるなんて。
それはやらない手はない。
少女はうれしそうだったが、青年は違っていた。
少女は青年を見た。
「よしてください。僕を占うなんて。
やめたほうがいい。」
その声音は、とても静かで、うれしそうだった彼女は彼の紫暗色の瞳を見て一瞬はっとして、
思わず、手から一枚カードを落としてしまった。
そのカードを青年は静かに拾い、少女に見せた。
そのカードは『死神』。
少女ははっとして顔を上げた。
「未来がわかってしまうなんて、魔族の僕でも気味が悪いですよ。」
青年は一瞬のうちに闇を縫うと少女の体をベッドへと押し付けていた。
顎には彼の手袋をつけた冷たい手が添えて。
とても、彼女の力では青年を押しのけるのは不可能。
その脅えた目で僕を見るのはやめてください。
僕は魔族なんですよ?
僕にはその甘美な思いは狂気だ。
ここはあなたのベッドだし。
青年は少女にキスをすると、同時に少女は一度大きく驚いたように目を開いたが、
そのまま、目を閉じその口からは血が滴り落ち、力なく細い両腕は下へと落ちたのだった。
それは、死の接吻。
そして、青年の暗紫色の瞳にも、一筋の涙が頬を伝った。
「リナさん。あなたはおっしゃいましたよね?
僕が涙を流すまで、あなたは歌をやめないって。
あなたは僕の涙を見てしまった・・・。
だから僕はもう二度とあなたのスイングを聞けなくなってしまったんです・・・
永遠に。」
「僕はあなたを愛していました。」
青年はベッドに横たわる少女をいたわるように持ち上げると、
そのまま闇へと溶けていったのだった。
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ゼロスは、リナのことを誰よりも大切に思っているのだが、彼はやはり魔族としてのルールを越えられなかったまじめな人なんですね。
そういうふうな属性に作られた彼は本当にかわいそうです。枠に入れられすぎて、彼はどうにでもできる力があるのに、彼の世界にはタブーが多すぎますね。
でも、それもこれも、彼らが力を持ちすぎているので、金色の魔王様が世界のバランスを保つためにそうしたんでしょうね。
ここまで、読んでくださってありがとうございました。
作品名:あたし、やめないわ。 作家名:ワルス虎