あたし、やめないわ。
「あの・・・リナさんこれは・・・」
「ゼロス・・・」
その闇をまとった青年はただ立ち尽くしていた。
彼の気ままな主人のもとで、あくせく働いてようやく少女の青年へのほとぼりが冷めたこれであろうと考え、戻ってきた。
が、これだ。
振り返った少女は髪を掻き揚げ、決まりが悪そうに、すぐに彼からの視線をずらした。
少女たちの目の前には、巨大な大爆発痕があり、
そこらじゅうから、濛々と煙が立ち上がっている。
ほとんどの木はなぎ倒され、
そこにあったであろう建物は跡形もなく破壊し尽くされていた。
そして、衣服が焼け焦げになっている無数の体格のよさそうな大男たちが倒れている。
「おのれ・・・リナ=インバース・・・
お前みたいな女初めて見た。
本当にお前は女じゃない!
この恨み覚えておけよ・・・」
その中の一人のナイフをもった男は、そこまで口にすると、顔を下に向け意識を手放した。
「あ・・・あははは・・・♪
さてと。お宝お宝。」
「はは・・・リナさん。
これはやりすぎでは・・・確かに、リナさんはそんじょそこいらの男たちよりも強いですけど・・・」
少女が笑ったので、青年もつられて笑った。
でも、ほとんどひきつり笑いでしかなかったけれど。
「でも、周りをみてくださいよ。この破壊の数々を。」
「なに?今度もなの?
あたしの大事な趣味の盗賊いぢめもやめろっていうつもりなの~!?
いやよ!
あんたになんていわれようともこれだけはぜ~~~~ったいにやめないわよ!!!
あたしはかの有名な大魔道士リナ=インバースなのよ!
ぜ~~~~ったいに!!」
「リナさん。
本当にあなたって人は危なっかしい人ですね。
確かにあなたは誰にも負けないくらいの魔法力を持っている。
強いかもしれない。
ですが、
あなたは女性なんですよ?
自覚してくだい。」
「なによ!女性だったら、おしとやかにしておけっていうの?
あのシルフィールみたいに?
あたしの性に合わないわよ。
お断りするわ。」
「ですが、リナさん。
もし、その魔法力を奪われてしまっては、あなたはただの人間の女性でしかないんですよ?
それをお忘れなく。
今は万が一にもあなたに何かあった場合僕がそばにいますから、危険ではないかもしれませんが、
今後は一切保障はないんです。」
「何いってんの!あたしに万が一何かあった場合は、
これから先もずっとあんたが助けてくれるんでしょう?ピンチのときに・・・
あたし、やめないわ。
世界に盗賊がそこに存在する限り、そこにお宝があるんだから!!」
「リナさん・・・」
「ほら、お宝を運び出すのを手伝って!
宿屋までもって帰らなくちゃいけないのよ!
あんたの空間移動使わせてよ!」
「リナさん~~!」
「なにごちゃごちゃ言ってんの!減るんじゃないでしょう?
ほら!男ならさっさとする!あんたはあたしの便利なアイテムその3なんだから!
そのために、あんたここに戻ってきたんでしょう?」
少女はそういうと、青年に向かって左目を閉じて目配せをした。
さすが、自分でいうだけのことはある美少女大魔道士。
青年は自分がここに戻ってきたのは、タイミングが悪かったと理解したのだった。
そして、自分はどこにいっても間違いなく下僕体質なのかもしれないと細くため息をついた。
作品名:あたし、やめないわ。 作家名:ワルス虎