しーど ほーむ
「かなり危険だろうな。元々、おまえには抹殺指令みたいなものが下されているらしいんだ。だから、わざと表から遠ざけてた。マリューさんの話で、俺もようやく納得がいったよ。ジャスティスとフリーダムの両方のパイロットが狙われるはずなのに、キラにだけ執拗なほどの捜索がなされているから常々、疑問に思っていた。」
完璧なコーディネートを受けている僕は、回帰派のブルーコスモスにとっては最も憎むべき標的であるだろう。わざと、僕は隠されていた。その理由が、嫌悪されているからという抽象的なものではなく具体的な理由だったことまでアスランは告げてくれなかったのだ。それも、たぶん気にするだろう僕のため。
「・・・なんだか・・・ものすごく、僕だけ居場所がないような気がして・・・ごめん・・・」
「私くしは、ここに存在するキラだけでいいのだと申しましたよ。」
「・・うん・・わかってる。それでも辛くなって・・・ごめん、一度、戻ってカガリに殴られることにする。」
きちんと後始末をして、それから、ここへ戻ろうと思う。何年かかるのかわからないけど、それでも戻ってみたいと思っている。ここで一息吐けば、また出ていけそうな気がする。そこがどこかはまだわからないけど、必ず、前へと進む道ではあるだろう。
「キラ、まだ新しい秩序というのは確立されていないんだ。たぶん、それは長くかかるものだと思う。両者にあるわだかまりというのは簡単なものではないんだ。それが解消できるのかどうかすら、まだ未知の状態だ。」
親友は苦笑して、歌姫とは違う側の僕の横に腰を下ろした。こうやって、ゆっくりと顔を合わせるのは一年以上久しぶりなことだった。じっと僕の顔を親友は眺めていて、困ったように笑いかけた。
「おまえの悪い癖だよ。なんでも抱え込んで勝手に自爆しちゃうのはさ。少しは誰かに甘えればいいんだ。」
「えらそうに。」
「そういう口答えは家出なんてことをしなくなってから言え。俺はそういうことはしない。ほんと、子供の頃から世話ばかり焼かせてくれるね? キラは。」
「別に焼いてくれなんて頼んでないよ。」
「仕方ないだろう。おまえの世話は僕の趣味なんだからさ。」
「あら、最近の私くしの趣味もキラのお世話ですわ。」
ふたりはそう言って立ち上がった。そして、僕に手を差し出す。未来へと続く道を共に歩んでいくだろう人たちの手が、僕の前にある。僕が何者であろうと、この手は差し出され続けるだろう。いつか、また、ここに戻りたい。この手と共に辿り着くだろうホームという場所を僕が心に根付かせることができたら、山父に、そのことを報告して感謝したいと思う。もう一度、立ち上がる気力をくれたのは、たぶん、この地であり、山父が受け入れてくれたという真実であろうから。