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シード その後の日常

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毒を食らわば皿まで、とはよく言ったものだ。こいつは毒にもなるしクスリにもなる。まあ、クスリになるのは他人だけだ。自分にとっては毒のようなものだろう。呑み込めば、たちまちに痺れて動けなくなってしまう。といっても、今は、こいつのほうが動けなくなっているのだけど。
 戦後処理とかいうものに付き合わされて、途方も無いお人好しのこいつは、頼まれた仕事をせっせとこなしていた。それはいいのだ。ただ、限度の問題で、それまでだって、かなり無理をしていたくせに、さらに磨きをかけるかのように無理をした。周りの誰にも気付かれなかったらしく、自分が久しぶりに顔を合わせるまで、元気なフリを押し通していた。お互い、忙しくて何ヵ月ぶりかで休暇をとって、様子を窺いに来て、久しぶりにブチ切れた。
「おまえというやつはぁぁぁぁ。」
「今、手が放せないんだよ。話なら今晩、家で聞くから黙っててくれない?」
「まだ、そんなことぬかすのか? この大バカものっっ。」
「うるさいよ、アスラン。みんなに迷惑だろ? 」
 確かに、そこには、たくさんのスタッフがいたし、忙しくしていたのもわかっていた。みんながバラバラに動いていた所為で、監視が疎かになったのは否めない事実だが、それでも自己管理などというものは自己の責任だ。これが、こいつの姉あたりだったら、有無も言わさず即効で殴られているところだ。
「俺が訪ねてきたのに、その仕打ちか? 」
「仕方ないだろ? 頼まれたことが、いろいろとあるんだ。僕は、ここに間借りしてるだけなんだからね。他の人に迷惑になるから帰ってよ。」
「依頼先はどこだ?」
「シモンズさんと、マリューさんと・・その他、いろいろ。どれも急ぎで、なるべく急げって。後、きみのところからも頼まれてるよ。」
「俺のとこ?」
「うん、アスランの手助けになるからってさ。システムの再構築してるんじゃないの?
プラントの議会は。」
 それが一番大きな仕事なんだよねぇ、と呑気に笑いつつ、手を休めないところが、こいつである。だいたいコーディネーターは13歳で成人と見做されるとはいえ、16、7のこいつに議会のシステムの再構築を依頼するのがどうかしている。そんな仕事は、ひとつのチームが担当する規模のものだ。で、こいつは、そんなことも考えずに引き受けたのだろうと推測された。たぶん、自分の名前を使われたからだ。
「キラ、正直に言え。何日、ここに居座ってる?」
「・・さあ・・・でも、眠くなったら仮眠室で寝てるし、食事も適当にしてるよ。」
 自覚がない。これでは埒が明かないことは明白だ。プラントにいるディアッカに連絡して調べさせたら、本当に依頼を出していた。ついでに、エリカ・シモンズとラミアスにも連絡したら、こちらも依頼しているという。それも信じられないぐらいの量に膨れていた。どちらも、キラが「いいですよ」と、ふたつ返事だったので、そんなに仕事を抱えていることは知らなかったらしい。そちらの分は丁重に断って、プラントのほうはイザークの母親あたりから断ってもらう手配をした。


 連絡と手配をして戻ったら、まだ働いていたので、電源から抜いてやった。さすがに、ブチ切れてはしたものの、俺の顔を見て黙り込んだ。よしよし、まだ幼少時の教育は効を奏しているようだ。こちらが真剣な態度に出れば、本気で怒っているとわかるからだ。
「・・僕・・別に・・無理は・・・」
「つべこべ言わずに、メディカルチェックを受けろ。」
「えー、アスラン、横暴すぎない? いきなり電源引っこ抜くなんて荒技使うしさ。せっかく、いいとこまで出来てたのに。明日、拾い上げるのが厄介じゃないか。」
 まだ働く気があるらしい。
「その顔色と、また痩せてる身体を、おまえの姉に映像で送ってやろうか? キラ」
「・・あ、それは、ちょっと、まずいかも・・・」
「ちょっとは自覚あるわけ?」
「だって、ベルトの穴が・・・でもさ。別に、ほんと、どこも悪くはないって、アスラン。だから、メディカルチェックなんてやめようよ。」
 もちろん診断結果は過労と胃潰瘍と、その他もろもろ出てきて、即入院。神経図太いのか細いのか、親友である俺でもわからない。図太いんだろうな、やっぱり・・・気にしてないんだから。さて、どうするかを考えないとな。放置するから駄目なわけで、どこかで管理してもらうか保護してもらうほうがいいいんだろう。自分の傍はちょっとまずい。フリーダムのパイロットは有名すぎて、いきなり、そちらの仕事を引き受けられそうだ。二度とMSに搭せるつもりはない。ということは、後の二人。なら、元婚約者が妥当だろう。それなら居場所もわかりやすいし、プラントがメインになるから会いやすい。
「まあ、それは困ったことですね。よろしいですよ。キラ様は私のブレーンということで登録させていただきますわ。身体の具合が戻られたら、こちらにお連れくださいね、アスラン。」
 もちろん、ヤマト夫妻にも了承をとり、ここでの保護者であるラミアスにも許可は貰った。
「ごめんなさいね、アスラン君。キラはあんな調子だから・・」
「いいんです。そのことは、俺が一番身に染みて理解してますから。そのうち、そっちにも顔を出すように説得しますから、おばさんも待っててください。」
 あれから一度も両親の許へ戻っていない。わかっているから、誰も何も言わないのだが、それでも両親はさぞ淋しい思いをしているだろう。親不孝ものだ。俺なんて両方なくしたから戻るところもなくなったのに・・・たぶん、あいつが戻らないのも、それが一因ではある。そんな気遣いされるほうが辛いっていうことに気付いてほしい。無理だけどさ。
「キラ君たら、ちっとも何も言ってくれなくて・・ごめんなさいね、保護者失格だわ。」
「とんでもない、ラミアスさん。あいつはわかりにくいんです。気にしないでください。」
 一体、俺はおまえのなんなんだよ、・・・ったく、どーして俺がペコペコと頭下げてるわけ? 仕事でなんか頭下げたことないんだぞ。と、文句を言いつつ病室に戻ったら気持ち良さそうに寝ていたので脱力した。また、いろいろと抱え込んでたんだろうな、こいつ・・・絶対に吐かないだろうけど。手にしていたコーヒーを一口飲む。たまに、のんびりとすればいいだろうに、なぜか、こいつはちょこまかとしたがる。ナチュラルの友人たちがラミアスの許にいるというのも理由なのだろう。その友人に頼んでおいたが、部署が違うというか、こいつだけ宙ぶらりんになっていて注意を怠っていたというのが正解だろう。
「・・・それ、一口。」
 考え事をしていたら、下からにゅっと手が伸びてきた。
「おまえ、自分が胃潰瘍だって自覚がないな? 刺激物厳禁に決まってるだろうが。」
「じゃあ、外で飲んでよ。」
「うるさいなぁ。ちょっと休憩させろ。俺は今まで走り回ってたんだぞ。・・・ほら、キラはこっち。」
 ミネラルウォーターのペットボトルを手に渡してやると、起き上がった。こきゅこきゅと飲んで、あーおいしいと宣う。
「キラ、ラクスのブレーンということで当分はプラントに足止めだ。」
「え?」
「依頼されてた仕事については全部、断りいれておいた。後、ラミアスさんとキラの両親にも了解はとったからな。反論は無用。」
作品名:シード その後の日常 作家名:篠義