【どうぶつの森】さくら珈琲
「わああああああん!!!」
てっきり赤ちゃんの泣き声かと思ったら、そこには緑色のマスクをかぶった大柄なゾウがいた。
「3ごう、情けないぞ。泣くんじゃない!」
1ごうが叱責しても3ごうはまだしゃくり上げていた。あまりにも泣き止まないのでわたしはティッシュを渡した。すると豪快な音をたてて鼻をかんでいた。2ごうが露骨に顔をしかめる。
「だって、なんか怖い人たちが来て、ボ、ボクのおやつ……全部とられちゃったぁ」
1ごうの顔色がさっと変わった。そして、叫んだ。今日は耳の痛くなる日だ。
「村荒らしだー!!!」
そのとき、ぼかっと何かが何かを打つ音がした。
打たれたのは、1ごうの頭。
じゃ、打ったのは?
後ろには、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたオレンジ色の小さなキツネたちがいた。数えたところ五人。1ごうを殴った子を見たら、手には太い大根が握られていた。あーもう、変な人ばかり村に訪れる日だ。本当に今日はなんだっていうの。
1ごうが痛みを訴えている間、キツネたちは下品な言葉を吐きながら逃げていった。
……なんだか呆気にとられた。あのワルガキが、最近流行ってる村荒らしってやつ? なんだ、もっと強盗みたいなのを想像していた。
「5ごう! 何ぼーっとしてるんだよ!」
1ごうが痛みに涙を流しながら怒鳴ってくる。
―――……大丈夫? 頭。
面白いくらいに1ごうの後頭部のたんこぶがみるみる腫れ上がっていくので、申し訳ないけれどふき出しそうになってしまったのは事実だ。2ごうなんて、すでに腹を抱えて笑っている。
「あいつらが村荒らしなんだよ!」
―――もっと凶悪なの想像したけど、ほっとけばいいじゃない。たかだか子どもなんだから。
しかし、だんだんそうは言ってられなくなってきた。村中の至るところから悲鳴が聞こえてきたからだ。キツネたちは木をなぎ倒し、花を踏みつけ、民家に落書きをし始めた。たった五人しかいないのに、すごい手際の良さであっという間に村が荒らされていく。感心している場合ではないが、さすが村荒らしという名を持ってるだけはある。
門番さんも慌てて追いかけるものの二人しかいないので、ど捕まえられるわけがない。
絵に描いたような地獄絵図、というわけでもないけれど、明らかに放っておいていいことではなさそうだ。
―――で、アニマル3さん。こいつらをどうやって捕まえるわけ?
「マニュアルはどうだったっけなあ」
散々煽っておいて、ここに来て1ごうはしらばっくれた。わたしは苛立ちを隠しきれずに言った。
―――なんとかしないとサイハテ村みたいになっちゃうよ!
こうやって話し合いをしている間に、村はどんどん荒らされていく。
やっぱり片っ端から捕まえていくしかないのだろうか。一応わたしたちは五人いるので、一人ずつ捕まえることは不可能ではないけれど、何しろあのキツネたちはとても走るのが速い。
すると、4ごうこと、とまとが勢い良く手を上げた。
「リーダー! あたし、良いこと思いつきましたぁ!」
みんなが一声に彼女を見つめる。
「ドア、閉めちゃいましょぉ!」
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗