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【どうぶつの森】さくら珈琲

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―――門番さん、早く門閉めちゃってください!
「何を言うでありますかさくらさん! そんなことしたら・・・」
―――いいから、早く!

 真剣に怒鳴ると、門番さんは悩んだ挙句やっと門を閉めてくれた。こんな作戦、正直うまくいかないだろうというのが本音。



「なんで閉めるのヨ! あいつら閉じ込めちゃって一生村で暮らさせる気!?」
「チームってことは集団行動してるわけであってぇ、それを利用するわけなんです!」

 4ごうはみんなに伝えようと一生懸命話していた。こんな真剣なとまと、初めて見た。しかし、真剣なもののどこか楽しんでいるようにも見えた。

「一斉に門に集まったところを捕まえるわけですぅ!」

 至って単純な作戦だ。なのに、拍手が起こり始めた。
 いやいや! どう考えても単純すぎでしょ!

「お、おいらも同じこと考えてたんだぞ4ごう! よし、早速取り掛かろう」
―――いや、さすがにそれはうまくいきっこないんじゃ……。
「大丈夫ですよぉ5ごうさん!」

 もはやとまとがリーダーになったようで、わたしのこともすっかり5ごうと呼んでしまっている。

「子どもの心理は子どもが一番わかってるんでーす」

 とまとはピースマークを作って見せた。どこからそんな自信が出てくるのか謎だった。


 確かに馬鹿げてるけど他の方法を考えている暇はない。

「コンコン団! 警告だー! 村の門を閉めたー! お前たちの逃げ場はないぞー!!」

 1ごうが村への放送を使って、警告を出した。
 こんなので本当に門に集まるのかなぁ。そう思っていたら、2ごうが叫びだした。

「来たわヨ〜〜!」

 キツネたちは「うわ〜〜帰れなくなっちゃう!!」と騒ぎながら走ってきた。なんて単純な思考だ。
 この作戦で一番気に食わないのは、この強盗みたいなマスクをかぶらないといけないこと。相手を惑わすためらしいけど、どう見たって不審者だよ……。
 なんだか自分がすごくしょうもない夢を見てる感覚になった。どうも最近非日常な事件が多すぎる。本当ならこの時間はビーフシチューを煮込んでるんだよ、わたし。
 まあ、たまにはこんな刺激も悪くない。ごくたまにはね。

「フォーメーションV!」

 1ごうがまた叫ぶ。
 別にかっこよくフォーメーションといってもそんなに大それた並び方をつくるわけではない。何しろVなのだから。
 門の前に先頭で一番体の大きな3ごうが立ちはだかり、その後ろにみんなが背の順にV字で並ぶだけ。ちなみにこれも、4ごうであるとまとが考えた。
 うまくいきっこない思う反面、うまくいくといいなぁと他人事のように思う。まず一番前に立ちはだかる3ごうが怖気づいて逃げないか心配だったが。

「うぎゃ!」

 あ、捕まった。
 3ごうがリーダーと思えるキツネをガシッとつかみ、後ろに渡す。バケツリレーの要領で。後ろでわたしととまとが家から持ってきたロープで縛り上げた。
 本番一発のわりにうまくいった、と思う。
 呆気にとられている奴らはたやすく捕まった。とにかく前へついていこうという逃げ場を失ったアリのような精神がこいつらの敗因かもしれない。後ろの方にいた二人がやっと理解して逃げようとしたけれど、門の周辺にこれでもかというほど落とし穴のタネを埋めておいたから、見事それに引っかかってくれた。

「やめろ! 離せよ!!」

 五つ子だろうか、どの子も揃いも揃ってオレンジ色の毛並みだ。
 1ごうの頭を殴った大根を持っていた子は、ひたすら汚い悪口を叫び続けていた。そこで思い出してちらっと1ごうの頭を盗み見したら、たんこぶはさっきより腫れを引いてきたようで安心した。

―――あなたたち、自分が何したかわかってる?

 伸縮自在なこのマスクは綿100%で案外つけ心地が良く、完全にかぶっていることを忘れるほどだった。だから、このキツネたちからしたらそんな顔で怒っているわたしは大変不気味、あるいは滑稽に映っていたに違いない。冷静に考えるとなかなかに恥ずかしい話だ。

「なんで村荒らしなんてするのヨ!」

 2ごうが呆れながら聞くと、小さなキツネたちはぎゃーぎゃー騒ぎ出す。

「べつに〜。チーム組んでても別に活動ねーし! 子どもっぽいヒーローごっこも飽きたしたまには悪役になろうと思っただけー」
「そしたらけっこー壊すの楽しくて!」
「そうそう! 一旦門でちゃえばこっちの勝ちだし!」

「ふざけんな!!!」

 いきなりの怒声だった。騒いでいた声が静まる。1ごうが真っ赤な顔で叫んだ。

「何でそんなことしかできねーんだ!」

 うわお、この人、本気で怒ることあるんだ。
 キツネたちは涙目で震えている。どんなに強がっていても、所詮子どもだ。

「いいか、壊したりいじめたりするチームなんて最低だ! 集団でやるなんて男のやることじゃねえ! そんなのは何も得られない!」

 そのとおり。いいこと言うじゃん! わたしは神妙な面持ちでうなずいた。

「お前らはバカだ! 大バカだ!! バカヤローだ!!! ワルってのは、そんなかっこ悪い大馬鹿もののことを言うんだぞ!」

 そうだそうだ、とわたしはもっと深くうなずいた。
 そして、

「そんなワルを倒すのがかっこいいヒーローだろうが! そう、おいらたちヒーローだ!!」

……突然話は、1ごうの考えるヒーロー論に飛んだ。

「いいか? 悪さをするためにチームを作るんじゃねえ! 本来の目的を思い出せ!
 一人じゃ出来ないこともチームなら出来る! そのために作るんだ!
 そして悪い奴に教えてやるんだ、チームの良さを! おいらたちアニマル5はそのためにあるんだからな!」

 あれ、なんでこの人、突然こんな話をしてるんだろう……。今に始まったわけではないが、このネコの考えていることは支離滅裂すぎる。
 なのに、驚いたのはキツネたちの次の言葉だった。

「リーダー、オレたちもチームに入れてください!」

 彼らはそのぶっ飛んだスピーチに感動して、1ごうに頭を下げたのだった。どうやらこの流れに疑問を抱いているのはわたしだけだし、うまくまとまりそうだから口を出さないでおこうと思った。はっきり言えば、今あるのは早く終わらせて帰りたいという気持ちだけだ。
 1ごうは嬉しそうに「いいぞいいぞ」と快諾した。これで、晴れてアニマル10になったというわけだ。
 とまとが「リーダーかっこいい!」と抱きつくと、1ごうはまた真っ赤になった。
 3ごうが飛びつくと、壁に投げられてまたたんこぶが一つ増えた。
 もうどうにでもしてくれ、とわたしは思った。今日はすごく、疲れた。

―――反省してくれてよかったね。

 わたしは憔悴しきった顔で1ごうに言った。
 ほんとにすごく疲れた。夕飯はもうインスタントラーメンでいい。

「4ごうたちのおかげでもあるよ、ありがとな!」
―――いいよ。まぁ、なんだかんだ結構楽しかったしね……。
「あたしも楽しかったですぅ!」
「よーし、じゃあ早速家探すかー!」
―――……へ?
「なんだよ、その顔?」
―――いや……帰るんじゃないの?