【どうぶつの森】さくら珈琲
「それでヘコんでるわけかぁ」
みしらぬネコさんが納得したように言った。
バニラが帰った後、呆然とするわたしが向かったのは「ハトの巣」だった。
わたしの思考停止した頭は、カフェインを摂って少しでも落ち着くことを指示しているようだ。しかし冷静になればなるほど、矛盾しているようだが焦ってくる。
―――……いきなり、引っ越すだなんて言うから、なんて言っていいかわからなくて……。
「この村からの連絡手段は手紙くらいだしなぁ。さくらもケータイ買ったら?」
そして、結局みしらぬネコさんとマスターに相談してしまって。
「村から都会ってバニラもきついだろうね」
「クルックー。水が美味しい地域なら、コーヒーの味も期待できますが……」
二人は真剣にこの問題を考えてくれていた。
そして、二人の結論はこうだ。
「バニラさんの人生の大事な選択ですからね」とマスター。
「さくらは余計なこと言わずに聞くだけでいいんじゃない?」とみしらぬネコさん。
―――き、聞くだけって……。
「だって、決まったことなら仕方ないもんね」
こんな大事なときに、親友として聞くだけ!?
しかしみしらぬネコさんはのんきに続ける。
「マスター、もうすぐ花火大会だっけ? 残念だね、この村の花火はとってもキレイなのに……」
―――ちょっと、今は花火大会どころじゃないでしょ! まじめに聞いてよ!
「だからさ、さくらは何もしなくていいんだよ。
ちょっと、そんな怖い顔しないで! 親友なら余計なアドバイスで彼女を揺らがせるより、話を聞いてあげるだけでいいと思うんだ」
―――正論っちゃ正論だね。だけど問題があるよ……。
「何が?」
―――わたしにそれをやり通せる自信が、ない。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗