【どうぶつの森】さくら珈琲
わたしたちは、あの得体のしれないテント住人の無礼な対応にかなり、いやすごく、腹が立っていた。
「絶対合言葉を見つけてやりましょぉ! ヴィスくん! さくらさん!」
とまとの言葉に、わたしもヴィスもうなずいた。ヴィスは正直どうでもよさそうな顔をしていたけれど、付き合ってはくれるみたいだ。
合言葉を聞いたなら、きっとこの村の誰かがそれを知っているはず。
村中を走り回って尋ねていった。
「合言葉? 知らねぇなぁ」とロボ。
「アタイはそんなの何も聞いてないよー?」とリリアン。
「おいらたちアニマル10は平和のために活動するんだぞ! 遊んでる場合じゃなーい!」といつも通りの1ごう。
どうやらみんなは知らないらしい。門番さんに言いつけようかな。前の村荒らしの件といい、うちの門番さんは誰でも気にせずに村に入れすぎだと思う。
しかし、特に明らかな迷惑かけてるわけでもなさそうだし、追い出すというのもなぁ。
きっとすごい秘密があるんだろうけどなぁ……。
「さくらくーん!」
向こうからラッキーが走ってきた。そういえば、彼にはまだ聞いていなかった。今日はどこにいたんだろう?
―――あ、ラッキー。ちょうどよかった。あのさ……。
しかしラッキーはわたしをさえぎって言う。
「キミにとっておきの秘密教えちゃうねぇ! 今日のイナリ家具の合言葉は『5ベル拾う』だよぉ!」
―――い、イナリ家具?
「おっと、ここから先はボクの口から教えられないのだぁ! んじゃ、親友としてちゃんとフェアプレイを貫き通したからねぇ」
ちょっと、フェアプレイって。何の意味か教えてもらってないから、全然フェアじゃないじゃん。イナリ家具?
すると、とまとがわたしの腕を引っ張りながら嬉しそうに言った。
「さくらさん、きっとあのテントがイナリ家具ってやつですよぉ!」
なるほど。合言葉はそれか!
正体がわかったなら、急ぐしかない。駆けだしたわたしのあとを、とまととヴィスもついて来る。ヴィスももしかしたら、少しはこの非日常を楽しんでくれているのかもしれない。少しだけ目がきらきらしていた。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗