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【どうぶつの森】さくら珈琲

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――なんちゃって。嘘だよ。

 狙い通り、警棒はつねきちの頭上近くをかすめ、すぐ近くに落ちた。

「いっ、な、あ、ああ……」

 すっかり腰が抜けたつねきちは、しばらく転がっている警棒を眺めながら、気が抜けた声を出していた。
 そしてやっと自分を取り戻すと、「何すんじゃー!!!」と怒鳴り声をあげた

―――ほらね、だまされるのって腹立つでしょ。

 つねきちはまだ体を震わせながら、憎々しげにわたしをにらみつけた。
 わたしがしたことは正確にはだますのと違うけれど、彼には身をもって、このようなことを続けるとどうなるか教えたかったのだ。

―――嘘ついて、誰かを傷つけることって、そんなに楽しい?

 わたしがゆっくりと問うと、つねきちは細い目を見開いてこちらを見つめ返していた。
 警棒はまだ転がり続け、やがてゆっくりと止まった。



「さくらさん、あんな説教するなんてびっくりですぅ」

 家に帰って夕飯の支度をしていると、後ろからしみじみととまとは言った。

―――だって、本当に腹が立ったんだもん。ちょっとこらしめてやった。
「いや、あんな太い棒を目の前で投げられたら誰だって怖いですよぉ」
「かっこよかったよ、さくら」

 ヴィスの呟きに、わたしととまとは弾かれたように振り向く。
 彼の顔には例の笑顔が浮かんでいた。
 わたしは、般若のような表情にみるみる変わっていくとまとを横目で見ながら、「ありがと」とお礼を言った。



 数日後、とある来客が来た。

「あれからあっし、目が覚めやした!」

 あのつねきちがやってきたのだ。何故門番さんは彼の入村をまた許したのか、問い詰めるのは後にして。
 彼は前回会ったときと格好が違った。あの青い怪しげなエプロンではなく、ぱりっと仕立て上げられたスーツを着ていたのだ。

―――……何しに来たの?
「ぜひ心を入れ替えて、まっとうな商売をさせていただこうかと、師匠!」
―――師匠?

「さくら姉さんはあっしの心の師匠でっせー! これからごひいきにお願いしやす!!
 あと、その人望を生かして少しはキツネ商店を広めていただこうかと……」

 わたしが事態を完全に把握する前に、今度は泣き顔でたぬきちさんが走ってきた。

「さくらさん助けてだも! ぼくの店の隣に変な店が建っちゃっただなもー!!」

 ああ、これからますます大変な日々になりそうだ。わたしはため息をついた。