【どうぶつの森】さくら珈琲
縛り上げると、つねきちはわんわん泣き出した。
「許してくださいよぉ、天職なんですよぉあっしの!」
サギを天職にするなんてどういう神経をしているんだろう。
つねきちの大きな荷物からはたくさんのぼったくったベル札が出てきた。
平和ボケしている門番さんたちは突然の犯罪者たちにおろおろしているので、制裁はわたしたちで行うことにした。
つねきちは号泣しながら叫び続ける。
「頼みますよぉ、後生やから!!」
―――何いってるの。どうせこれからも商売続けるくせに。
「あ、そ、それはその……」
図星か。とまともすっかり軽蔑のまなざしで見ていた。
「人をだますなんてどうかと思いますよぉ」
「ううう……故郷にいつも腹空かせてる弟たちがおるんですよ……」
―――え?
「いつも兄ちゃん腹減ったよぉって泣きはるんです……全部あいつらのためなんですぅ……。
あいつらを食わせるためにあっしは……あっしはぁ、うぅぅ……」
急に打ち明けられた身の上話に、不覚にもわたしは心を揺らがせてしまう。とまとなんてすっかりもらい泣きして、
「そんな事情があるなんて、かわいそうですよさくらさん!!」
と、さっきとは打って変わって、つねきちの肩を持っている始末だ。
どうしたものかと困っていると、向こうから声が聞こえた。
「あっ、兄ちゃん!!」
「げっ!!」つねきちが、とても不快そうな声をあげた。
今ではすっかりアニマル10のメンバーになった、あの村荒らしコンコン団のキツネたちだ。彼らは今、1ごう達ともどもこの村の住人である。まるで五つ子に見えるくらいそっくりなオレンジのキツネたちは、つねきちを見つけるなり駆け寄ってきて周りをわらわらと囲い始めた。
「なんだよ兄ちゃん! 久しぶりじゃーん!」
「兄ちゃん、何かいいの売れた?」
「兄ちゃん元気だった? また遊んでよ!!」
「やかましいやかましい〜〜!! あっちへ行け〜!!!」
つねきちが怒鳴ると、キツネたちは「きゃははは!」と笑い声をあげながら逃げていった。
……ということは。
――もしかして、腹を空かせてる弟たちって、あの子たちのこと? あの子たち、結構前からうちの村に住んでるんだけど。
「うっ、あ、いや、その……いやぁ、何かの人違いってことで……」つねきちがしどろもどろになりながら答える。
――いや、思いっきり兄ちゃんって呼んでたよね?
ヴィスはわたしの方を見ると、「お人好し」と小さく口を動かした。その通り、わたしはまた騙されたというわけだ。
つねきちもすっかり開き直って、
「もういいですわぁ!! 煮るなり焼くなり好きにすりゃええやろ!」
とふてぶてしく言い放った。
こんなに人を騙して、嘘をついて。なお平気でいられるなんて、信じられない。わたしは、許せなかった。
身をもって教えなくてはいけない。
―――じゃ、そうするよ。今からあんたに罰を与えるね。
わたしは門番さんの、きっと一度も使ったことがないであろうピカピカの警棒を抜き取り、狙いを定めた。
「ちょっとさくらさ……!?」
わたしの行動を、とまとはハラハラしながらこっちを見ている。
門番さんも「やめるであります、やめるでありまーす!」とパニックに陥っている。
わたしは、今更助けを求めるつねきちを無視して、思いっきりその警棒を投げつけた。
「いっ……」
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗