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【どうぶつの森】さくら珈琲

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「さくらさん、どこいってたんですかぁ! 心配してたんですよぉ」

 みしらぬネコさんの言う通り、店を出てすぐに、激しい雨が降ってきた。気を付けて川の近くを通らないようにしたから、少し遠回りになってしまった。とまとたちにすっかり心配かけちゃったな。

―――ごめんごめん。大丈夫だよ。みしらぬネコさんから傘借りたから。
「ったく、とまとは大げさなんだよ! オレっちはこれくらいの雨、いつもシャワーがわりにしてたぞ?」とリク。
「いや、さくらさんをあんたといっしょにしないでよぉ!」

 とまとが反論して、そこからまた喧嘩。もう、どうしてこの二人はこう仲悪いのかなぁ。いや、喧嘩するほど仲が良いともいえるのかな?
 珍しくヴィスが間に入って、三人でわいわいやっているのを見たら、あぁ、確かに家族みたいだなって、なんとなくそう思った。


 それから夜になって。
 とまとが風呂に入ってるとき、わたしはリクに尋ねた。

―――どう? この村楽しい?

 リクは嬉しそうに答えてくれた。

「おう! 田舎にはなかったものがいっぱいあってすんげー楽しいぞ!」
―――良かった。ところで、どうしてとまとにちょっかいかけるの?
「別に、オレっちは突っかかってねーもん。あのちんちくりんが生意気なんだ!」

 そう言って熱々のココアを一気飲みして悶え始めた。なんだか、ピースとリリアンみたいだな、あの二人って。

「さくらは?」
―――わたし?
「毎日楽しいのか?」

 もちろん、即答だ。

―――うん、この村が大好きだから、すごく充実してるよ。

 そのとき、とまとがお風呂から上がってきた。

「さくらさぁん、次どうぞー」

 お風呂上りのとまとは、なんだかいつも赤ちゃんのような不思議な甘い匂いがする。
 わたしは髪を下ろしているとまともかわいいと思うけれど、彼女はクセっ毛を気にしていつも二つに結んでいる。
 そんな彼女の濡れた髪を、熱に浮かされたようにリクは見つめていた。

「なに?」

 訝しげに問うとまと。
 あれ、まだお風呂に入っていないリクの顔が赤い。

―――どうしたの、リク?
「おい、ちんちくりん!」
「だから、ちんちくりんじゃないってば!」
「オレっち、お前のこと好きになっちまったみたいだ」

 わたしは飲んでいたココアをごふっと噴き出し、服に赤ちゃんのよだれかけのような染みを作ってしまった。舌も思いっきりやけどした。けれどその痛みや熱さを忘れるくらい、目の前の光景は衝撃だった。
 ちょうどリビングに入ってきたあの冷静なヴィスも、このドラマに驚きを隠せないでいる。
 ちょ、ちょっと、いくらなんでも展開が早いんじゃないだろうか……。
 とまとの方を見ると、まさかそんなことを言われるだなんて思ってなかったみたいで、完全にパニックになっていた。

「は、はぁ!? ばっかじゃないのぉ!?」
「バカでもいい! じーちゃんが言ってた、運命の女ってのは必ずいるんだと、それがきっとお前だ!!」
「いや、勝手に運命の女にされても……っていうかぁ、あ、あたし好きな人がぁ……」
「好きな人!? それってヴィスか!?」

 しかも変なところだけ鋭かったり。とまとはぎゃーぎゃー悲鳴をあげながらリクの暴走を止めようとしていたが、効果はなし。
 リクはヴィスを指さすと、高らかに宣言した。

「よーしヴィス! オレっちとお前は今日からライバルだ!」

 強引過ぎる。完全に傍観者になったわたしは、冷静に心の中でツッコミを入れた。。

「ちょっと、何言ってるんですかぁ!?」

 ヴィスはリビングに入ってきたときから、一言も言葉を発していない。わたしと同じくらい茫然と、リクのことを見ている。まるでその目つきは、家に突然現れた宇宙人を見るみたいだ。

「ちんちくりんをゲットするのはオレっちだからな、いいか!?」
「さくらさぁん! このバカを止めてくださーい!!」

 気づけば、わたしは声を上げて笑っていた。
 なんだかラブコメディを見てるみたい。リクって本当に面白い子だなぁ。彼が来てから、今日はどこでも笑いが絶えない。
 リクはとまとが好きで、とまとはヴィスが好きで、そうか、これが三角関係ってやつかぁ。
 とまととリクが喧嘩している横で、わたしはヴィスに言った。

―――困ったねヴィス、ライバル宣言されちゃったよ。
「……別に」

 ヴィスはそっけなく答えるが、その間もとまととリクは彼を会話に引き入れようとしてくる。
 いいね、これから、今までよりずっとずっと楽しい生活になりそうだ。わたしはわくわくしながら、先にお風呂に向かった。