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【どうぶつの森】さくら珈琲

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 ヴィスから話を聞いて、わたしは先ほどの決心も忘れ、簡単な身支度をすると慌てて外へ出た。
 向かうのは、村の掲示板だ。すでに人だかりができている。
 みんなが注目しているのは、この張り紙だ。

『おしらせ
 来週から3丁目4番地の池の埋め立て工事が始まります。
 危険ですから決して近づかないよう村のみなさんにはご協力お願いします。』

 1ごうがのんきに言う。

「なんかさ、新しくゴミ捨て場だかなんか建てるらしいぞー。やっぱ田舎って都会のはけ口にさせられちゃうんだなぁ」

 するといきなりロボが、後ろから1ごうの胸倉をつかんで怒鳴りだした。

「じゃあテメーがなんとかしろよ! アニマルなんちゃらが正義を守るんだろ!?」
「ぎゃ〜! や、やめろぉ〜!! 暴力反対!!」
―――ちょ、ちょっとやめてよ二人とも……ん、ヴィス?

 ヴィスは黙って人込みをかき分けると、張り紙をちぎり取って、近くの役場へと押し入った。
 今まで見たことがない、厳しい表情だった。そんなヴィスを見て、とまとが泣きそうな顔をしている。わたしは彼女の手をそっと握った。そして、わたしたちも役場の中についていった。
 そこはなんだか重く苦しい空気が漂っていた。
 受付に見たことのないイタチがいた。
 黒ぶちのメガネをかけた、いかにもセールスマンと言ったスーツ姿のカワウソだった。
 受付のぺりこさんは困ったように応対している。

「ですから何度も申しているんですけどねぇ、おたく、理解する気あるんですか?」

 嫌味ったらしい口調だった。いつも親切にしてくれるぺりこさんに不愉快な思いをさせているのが許せない。

「正直、他の重要な土地を潰すより、こんな田舎村の池を潰すほうがずっと有意義だと思うんですよ。
 いい加減ご理解頂けませんかね?」

 村長さんは唾をぺっぺと飛び散らしながら反論した。

「なんでじゃ! 村のみんなが使っている大事な池じゃ! 絶対渡さんぞ!!」
「でも、あの池は長い間ろくな魚が釣れていないでしょう? 譲って頂ければ村の利益も……」
―――おじさん、誰?

 なかなかこのやりとりが終わりそうにないので、さえぎって話しかけてしまった。
 セールスカワウソはうっとうしそうにこっちを向いた。

「この村のヒトですか?」

 わたしたちはうなずいた。いかにも興味なさそうだったが、彼は名刺を差し出してきた。

「そうですか。ワタクシ、こういう者です」

 そう言って名刺を差し出してきた。『政府公認不動産業セールス ホンマ』と、他にも細々とした紹介が書かれていた。なんだか、何もかもが胡散臭い。政府公認不動産業ってヘンテコな言葉、そもそもどういう意味だろう?
 ヴィスは名刺には目もくれず、ホンマをにらみつけたままこう言った。

「あの池には、たくさんの魚がいるし、村の飲み水にだって活用されてるんだ」
「ぼくちゃん、大人の話には口出さないって習わなかった? 第一証拠もないのに嘘は良くないよ、嘘はね」

 ヴィスをバカにされて、とまとは今にも怒りを爆発させそうな勢いだ。 

「ヴィスくんは天才釣り師なんですよぉ!」

 ホンマは舌打ちをすると、面倒くさそうに話を切り上げようとした。
 しかし何かを思い出したのか、わたしたちの顔をまじまじと見る。

「もしかして、おたくらつねきちを改心させた連中じゃありませんかねぇ?」

 つねきち? あぁ、この前急に店を建てた元サギ師だ。
 たぬきちさんにあまりにも苦情を言われてしょうがなく隣村に移転したから、もうこの村にはいないんだけどね。

「おたくらのせいで、こっちがどのくらい苦労したか……とにかくあの池は『存在価値がない』とウチでは決断を出されてるんですよ」

 わたしは、ヴィスが固く拳を握ったのが見えた。

「価値って、何?」
「そりゃまぁ、何か村の名物になるようなすごい魚がいるとか、ねぇ……」
「それなら、その価値、僕がつくってやるよ」

 そしてホンマの名刺を投げ捨てると、ヴィスは役場を出て行った。
 わたしは、「できるわけがないだろう」と喚きたてるホンマの腕をつかんで、こう言った。

―――できるよ、ヴィスなら。