【どうぶつの森】さくら珈琲
あまりにも早すぎるわたしの帰宅に対し、ヴィスは何も言わなかった。
そうして、午後いっぱいはヴィスと過ごした。釣りざおを磨き続けるヴィス相手に、わたしは自分とは思えないほどよくしゃべり、笑った。
ほとんど意味のないことだったけれど、口を動かさずにはいられなかった。
ヴィスはそんなわたしに、やっぱりいつもと同じように何も言わなかった。ただ律儀に、ひたすらにうなずき続けてくれた。
それで良かった。きっと、今はちょっとしたことでも否定されたら、泣いてしまいそうだったから。
忘れたかったのかもしれない。さっき見た二人を。
考えたくなかったのかもしれない。何もかも。
あまりにもうまくいきすぎて、認めたくなかったから。
自分が始めた終わりの物語を、引き裂いてしまいたかった。
もう、遅いけれど。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗