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玄塊群島連続殺人 黎明編

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第二章 因業の流刑地




曙光が畦道の上に、道端に立ち並んだ木々の影を落としている。彼女は陰影の間の照らされた地面を爪先立ちで踏み越え、影から影へ跳び移っていく。彼女の華やいだ気持ちの先で、丘の上で途切れる道が至るのは一本の大木。澄んだ空に目一杯、枝を広げた巨木を目指しているのだ。昨夜の雨で濡れた葉が、朝の光を受けて輝き、微風に揺れる。

しばらくして、美禰子は、丘の頂に達した。眼前の大木を仰ぎ見る。朝の精気の中で、彼女はこの地で始めて、本当の安らぎを感じていた。来た方角を振り返り、木の幹に背中を預ける。丘から見渡せる村の様子もどこか、懐かしげで、彼女は失われた故郷に戻ったような気がする。
最初は、ただ拒絶の対象でしかなかったこの島であるが、今また違う表情を見せ始めている。
気候とともに、美禰子自身の何かが
変化しつつあるのだ。少なくとも、三日前暗い屋敷の奥で、塞いでいた悲哀はもうどこかに消えてしまった。

遠方の路上に蠢く黒い点があり、次第に大きくなっていく。美禰子は、長い睫毛に縁取られた目を、細める。村民だろうか?
人影はこの丘を目指している様だ。次第に、彼の姿大きくなり、手足の動きが目視できる様になると、甚だ異常な事態がその見知らぬ男に起きているのがわかった。
此方からみえるのは、向かってくる男の背面である。彼は進行方向とは逆に歩みを進めつつ、丘へ丘へと後退しているのだ。それは後ろ歩きではなく、ムーンウォークに近いが、かといって摺り足をする訳でもない。しっかりと前に体重を移動させて、踏み込んで歩いている。しかし決して「前」に進まない。

謎の男は後退する事で、私に近づいて来るのだ。