ゆめゆめ
易い手つきで、しゅるりと腕の包帯を巻き直し、きつめに結んで、終了。
土方は上着を着直し、ぎこちない動作で立ち上がれば、薄墨色の瞳をぱさりと閉じた。
「―・・・馬鹿なだけだろ」
「どっちがですか?」
山崎を見もせずに、問いに答えもせずに、土方は懐からライターを取り出してカチリカチリとフリントを擦る。
紫煙を肺の中に入れて、吐き出し「報告書、さっさと出せよ」と一言残し、床を軋ませながら縁側へと出る。
部屋にうっすらと残った煙が、匂いと共に次第に紅く染まった外へと流れて、消えてゆく。
「副長」
「あ?」
「落し物、見つかったみたいですね」
番の親燕が寄り添うように、上空彼方へと消えてゆく。
幻想か、希望か。
ゆめか、ゆめか。
あの日、あの場所に、落としてきたものを取り戻す術は、もうない。