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花葬

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 「カカシさんて、」
 
 女の白い腕が伸びて、その細長い指先がカカシの頬を撫でる。
 白粉(おしろい)の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
 
 「いつも血の匂いがするねぇ」
 
 乱れた着物、
 ほどかれた色とりどりの帯。
 女の白い肌。
 そして唯一点だけ、血の色のような紅の色が薄明かりの中で浮かび上がる。
 
 「そうかなァ」
 
 女を片手で抱きながらカカシは口唇の端を吊り上げて笑う。
 
 「そうよ」

 くすくすくす。
 密やかな、女の含み笑い。

 「ちゃんと拭ってきたんだけどナァ」

 指先をチラリと眺めてそういうと、甘えるようにカカシは女を組み敷いた。
 パサリと女の長い黒髪が布団の上に広がる。

 華奢な腕。
 華奢な肢体。
 
 ……絡み合う、視線。
 
 カカシは笑みを浮かべたまま、女の項(うなじ)に顔を埋める。
 薄い口唇が首の血管をなぞる様に滑っていく。

 「ぁ」

 掠れた、吐息。
 それが滑るたびに。

 跳ねる肢体。
 縋りつくように白い腕が首に回される。

 「ねェ」

 カカシはその双眸を細めて、女を見下ろした。

 「キモチイイデショ?」

 ゆっくりと口唇を女の耳朶に近づけて、そう囁いた。

 言葉で犯す。
 その度に女は頬を紅潮させて体を震わせる。
 カカシを見るその双眸が、誘うように潤んだ。

 「今夜は一緒に行こうネ?」
 
 甘く濡れるその口唇を掠める様に口付けてカカシは哂う。
 
 
作品名:花葬 作家名:ぐるり