二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

儚いもの

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 



「シャルルが待ってるからそろそろ行くぞ」
 ずしっとよりかかって言うと、アンディが『重い』とうめく。
 そんなふたりの頭上を、シャルルが飛んだ。
 正確にはウォルターの頭をめがけて飛んできたのだが、一瞬早くウォルターが頭を低めたのだ。
 早めに気付いて行動をとっていたので、頭にくちばしが刺さることを回避できた。
「いつまでのんびりしてるんだ、ふたりとも!! もう待てないぞ!」
 アンディから退いたウォルターが『待ってなかったじゃん』と文句を言う。
 いや、それまでは確かに『待って』いたのだろうが、今のは問答無用のくちばしだったじゃないか、と。
 アンディが頭上のシャルルを見上げて、ぽかんと口を開ける。だが、何の弁解も、またステンドグラスに対する未練も見せず、あっさりと踵を返す。まるで何を見ていたのか忘れてしまったかのように、あっさりと。
「はいはい」
 ウォルターもそれに続いて、踵を返す。
 ふと、その足を止める。
 何故かふたりの向きが違う。
 ウォルターは元来た方向にきちんと足を向けていたが……。
 『あれ?』と振り返ると、あさっての方向へアンディがスタスタと歩いている。
「おいっ、アンディ、そっちじゃ……」
 ウォルターが言い終えるより早く、怒りで目を据わらせたシャルルがくちばしをキラめかせ、アンディの頭めがけて急降下していった。





 崩れかけた教会。かろうじて残った十字架と、壁にはめこまれたステンドグラスだけが、夕日に照らされて輝いている。
 街に銃声が響き渡った。
 煉瓦の壁が崩れ落ちる音。その中に、ガシャンとガラスの割れる音がする。
 欠片になって、ステンドグラスは飛び散った。色を空にばらまいて。
 やがて、ひとつひとつ地に落ちる。きらめきながら、カシャン、カシャン……。
 飴玉のように割れて散らばったガラスのかけら。
 色とりどりの欠片は、やがて闇に沈んで見えなくなった。






(おしまい)

作品名:儚いもの 作家名:野村弥広