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俺と貴方 君と私

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真昼の星



 「これ・・・」

その日、私をほったらかしにして外出していた彼は、帰宅するなり目の前に茶封筒に入った物を差し出した。
その仕草は、いっそ素っ気ないものだったが、耳垂がほんのり赤くなっている事から照れ隠しだと理解出来て、私は小さく笑いながらそれを受け取った。
開封してみると、それは意外にも詩集だった。

「君が詩集とは・・・。随分と、常の君とはかけ離れた物だな」
私は正直に思った事を口にした。
立腹するかと思った彼が、私の意見に賛同するように頷くのに驚く。

「俺もそう思う。だけど、この詩人の書く詩が、貴方に似ているから・・・」
「私に?」
「そう。この詩人は、目に見える物の裏側にある事象を見つめている。魚の大漁に沸き返る漁港と対照的に、水底では魚の葬送が行われるとか、時を正確に知らなくても花や鳥は咲いて鳴くとか・・・。何だか、貴方みたいだなぁって思う詩もあった。・・・・・・だから」
「私に?」
「・・・・・・貴方の優しさや心の痛みは、表立って見えないし、貴方自身も見せない。でも、見えないからって無いわけじゃない。それを感じさせる詩が、これ」
彼は詩集のページを繰ると、一篇の詩を私に見せた。

それを黙読しているうちに目の奥が熱くなってきた。

 ああ、そうだ
 彼は私の内面の痛みを、苦しみを理解してくれている
 それを、言葉としたものがこれなのだ

私は詩集を放り出すと、ソファーの傍らに立つ彼を引き寄せて、その腹に顔を埋めた。

「シャア・・・・・。お誕生日、おめでとう」

頭を抱き返してくれながら、彼が小さく囁いた。

 その日私は、彼を腕の中に閉じ込めたまま、何度も詩集を読み続けた。

そして、彼の想いが込められた詩集は、私の宝物となった。


『昼のお星はめにみえぬ。見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ』
2011/11/16

*引用は、有名な金子みすゞの『星とたんぽぽ』の一文です。
作品名:俺と貴方 君と私 作家名:まお