契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉
第1章 契約の代償
葡萄のレトロ調の絵柄入りのカップを傾け、赤銅色の豊かな髪の少女は気だるげに声をかけた。
「あ、ちょっとお兄さん。
コーヒーをもう一杯いただける?濃い目にね。」
その注文に白いナフキンを左手に下げた若いギャルソンは頷くと、店の奥へと消えていった。それを見ていた目の前の蒼穹の甲冑を身に纏った金髪の青年、ガウリイは少しあきれ気味の目だ。
「お前、さっきからそればっかり頼んでいるじゃないか?
俺はそんな優雅なコーヒーだけじゃ、腹を満たすことはできないんだ。
貴族じゃないからな。
悪いけど、俺は遠慮なく食事を取らせてもらうぞ。」
「お前も、本当に心配性だな。
時間が来ればすべては解決するさ。
リナも一緒に飯を食おう。」
青年は何事もなかったかなのように、笑顔だ。ちょうどさっきのギャルソンが、奥からコーヒーポットを持ってこちらに向かってくるところだった。
そのギャルソンが赤銅の髪色の少女のカップにコーヒーを注ぐと、ガウリイはそのギャルソンを捕まえ、あれこれと料理の注文を始めた。少女はジト目で、「よくもまぁ、そんなに食欲があるわね。」と、日ごろの自分の旺盛な食欲のことなんかトンと忘れている。
「あんた、さっきも大量に食べたのに、まだ頼むつもりなの?
人が食欲がないことをいいことに、料理を独占できる!なんって思ってるんじゃないの?本当男っていい気なもんね!」
少女はふてくされて、熱々のコーヒーを口にした。
「う〜苦ッ!」
そんな様子をちらりと青年は見て、少女のそんな様子に小さく笑った。
そして、薄い目で少女を見つめ、
「お前さんはもともと体は華奢なんだが、最近はちょっと痩せたんじゃないのか?」と、つぶやいた。
ついでに、「そんなんじゃ〜お前さんの期待の胸への栄養は行き届きそうにもないな。」と、付け加えて。
もちろん、金髪の青年がただで済まされるはずはなかったが・・・
作品名:契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉 作家名:ワルス虎