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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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隣町に着いてすぐに、ガブリエルは見知らぬキャラバンにその身を引き渡されることになった。
このギルドに着くまでの間、ガブリエルは大男に手を引かれてやって来た。
男性の手を握っていた手を離そうとしたときに、もう一度握り返された。
「ガブリエル。いいか?あの言葉を忘れるな。」
そう言うと、大男は、黒い頭巾を頭からすっぽりかぶった男と店の奥へと消えていった。
ガブリエルは、叫んでいた。
「お願い!弟たちを助けて!
 お願い!!おじさん!!」
ガブリエルの手を強く握り返してきた感覚に不安になって、少女は不安に駆られ店の奥へ向けて叫んでいた。
その声はきっと大男の耳に届いたに違いなかった。
そう言って、店の奥にいるあの大男を追いかけて行こうとしたら、少女の右腕がしなやかな手で掴まれていた。
「お嬢ちゃん無駄よ。
 あの男は、お嬢ちゃんみたいな子供が信頼していい相手ではないよ。」
少女が振り返ると、そこには長身の黒髪の女性のような風貌の男性が眉間に皺を寄せながら立っていた。
黒いマントを着ているが、そこから覗く黒いスーツは光沢が入り、つややかに光っていた。
「お嬢ちゃんが、グジョンが言っていた金髪の子かい・・・?
 おや、まあ!驚いた。本当だ。
 本当にあの男が言った通りの子だよ!」
その隣には女性らしいボディラインを強調した派手な服を着た栗色の髪の女性が、口元に手を当て驚いていた。
「お・・・おじさんとおばさん誰なの・・・?」
少女は掴まれてびくとも動かない腕を抑えながら、自分の行く手を塞いでいる派手な男女二人組みを警戒しながら少女は見上げた。
「まぁ!いやだ!この娘ったら!
 あたしのことなの!?おじさんって!?」
少女の言葉に鋭く敏感に反応したのは黒いマントの長身の男性。
男性は目を丸くしながら、少女のことを見つめた。
少女のほうは掴まれた手に力が入ったことを受け、痛みで顔をしかめた。
「ほら、ウェイン。
 手を離してやんなよ。
 この子、あんたの馬鹿力が痛いんですって。」
そう言うと、派手な服を着た栗髪の女性はウェインと呼ばれた男の手をそっと握って少女の腕から放させた。
女性のような口調の男性の手から自由になった少女は腕を後ろにさっとやった。
ウェインはそんな少女を見ると舌をペロッと出し、
「あたし、子供と失礼なこというコは嫌いよ。」
ぷいっとすねるように顔を背けてしまった。
もう一人の派手な服を着た女性の方はそんな男性を見ると、呆れたように笑い、「いつものことだから気にしないで。」と少女に向かってウインクをした。
そして、女性は怯える少女と同じ目線までしゃがみこみ、少女の手を取り優しく語りかけてきた。
「私の名前は、アンジェラよ。あっちはウェイン。
 男の癖に女性みたいなヒステリーを持ったやつだけど、いいやつよ。
 私の旅のパートナーなの。
 お嬢ちゃんの名前を教えてもらってもいい?」
そう言って、少女の青い瞳をアンジェラは覗き込んできた。
少女の鼻をふわりと花のようないい香りがくすぐり、少女は派手な女性の顔を見た。
へーゼル色の瞳がきれいだった。
「わたしはガブリエル・・・。」
「ガブリエルね。そう・・・。
 天使の名前ね・・・。
 あなたにぴったりの名前だわ。」
アンジェラはガブリエルの顔をしげしげと見てきた。
そして、彼女は少女が下を向くとさらさらと絹のように落ちてくる金糸をまぶしそうに眺めた。
「ゴールドを思わせる金髪
 サファイアの二つの瞳。
 それに、どうだい?
 この美しい顔。
 透き通るような白い肌。
 すべての女性たちがあんたに嫉妬するようになるわ。」
そっぽを向きながらだが、ちらりと少女の方を横目で見ていたウェインが皮肉そうにつぶやいた。
「本当に・・・あんたは本物の天使に違いないね。
 完璧だもの・・・。」
そう言って、女性は少し哀しい顔をした。
「すべての人間は光を求めているのね・・・。」
そして、アンジェラは少女の頬を優しく撫でた。
「私たちが、あんたを依頼主の元まで送り届けるわ。
 心配しないで、あたしたちは旅の魔道士。
 そこいら辺の剣士なんかよりもあたし達の方がよっぽど強いから。」
「あの・・・」
「残念だけどね、ガブリエル。
 もう後戻りは出来ないのよ。
 なぜなら、契約金が支払われてしまった後なのだから。
 あなたにはなんの罪もないのにね。
 あなたに決定権は何もないのよ。」
これから自分の身がどうなるのか不安になっているくせに、弟たちの心配をする少女を目の前に女性は残念そうに微笑んだ。
ウェインは「こんな仕事本当はいやだわ。人を送り届けるだけの簡単な仕事で高額報奨金なんて言葉に飛びついちゃって。」と悪態をぶつぶつ言いながら、
「こんな子供に、世間様はなんて残酷なのかしら。
 あたしの存在にも冷たいから、あたしは世間様も嫌いよ。」
そう、少女に向けて言葉を放った。
「明日から南を目指すわ。」
アンジェラは立ち上がり、少女の肩に手を置いた。
「長い旅になりそうね。」
男性の涼やかな声が少女に再びこの地に足を入れることがないことを予感させた。
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つづく ワルス虎