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アンタは黙って、アタシに抱かれなさい。

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「…なあ、お前、これ見てどう思う?」

ぺらりとシャツを捲り、物凄く真面目な顔をしたマジャルに馬乗りに跨られ、マリアは固まっていた。

(…物凄く、おっぱいです)

自分は男、ちんこはいずれ生えてくる!…と信じている相手に、「お前は女だ」と誰が言えようか。付き合いが浅ければ、「バカじゃねぇーの!」と鼻で笑ってやるところだが、何と言うか、いい感じに付かず離れずな、こっちに来てから初めて出来た、息の合う同年代の友達もどきに、すっかり心を許して、ド突きど突かれ合いの日々を過ごして来た今となっては、迂闊なことも口に出せなかった。「女」だと言ってしまって、今のこの関係が壊れてしまうのが怖かったのだ。この幼馴染が自分の性別を知って落ち込んだりするところを見たくはなかった。喧嘩をすることや、神に祈り、些細な悪戯を懺悔することは出来ても、慰め方など知らないし、ましてや誰かに慰められたことのないマリアにはどうしていいのか解らず、目の前にある柔らかそうなふたつの膨らみを見せられても困惑するばかりだ。マリアはそっと視線を外す。…今すぐこの場から、逃げることなど騎士の道に反することだったが、逃走したくて仕方がない。

「何で、目、逸らすんだよ!…ってか、やっぱ、コレ、ヤバイ病気なのか?!」

がっと胸倉を掴まれ、再びマリアの目に見てはいけないものが目に入る。見ないように目を閉じるが、ぐらぐら揺すぶられ、気持ちが悪くなってきた。
「お前、元、病院なんだろ?コレ、やっぱり、病気なのかよ!?」
(病気じゃねぇよ!おっぱいなんだよ!!)
穴があるなら、大声で叫んで吐き出してしまいたい。
「びょ、びよーき、じゃねぇよ…」
ぐらぐらと揺すっていた手がぴたりと止まる。それにおえっと嘔吐しそうになるのを堪え、マリアは息を吐いた。
「病気じゃねぇのか?時々、すげー痛いんだ。後、すげー、変な気分とかになるしよー」
自分の胸を掴み、はあっとマジャルが溜息を吐く。マリアは居た堪れなくなって来た。
「…病気じゃねぇよ。…なんか、たまにそーゆー風になったりする…もん、らしい…し…」
「そうなのか?…じゃあ、お前もそうなったりするのか?」
「…いや、俺は…」
おっぱいねぇから解んねぇよ。…とは言えず、マリアはごにょりと、口を濁した。
「しねぇの?」
「…うーん、するようなしないような…」
「どっちなんだよ!!」
揺すぶる腕を堪りかねて掴めば、その手首の細さに驚いて、マリアは慌てて手を離す。それに怪訝そうな顔をして、マジャルはマリアを見下ろした。
「何だよ?」
「…別に。…ってか、いつまで乗ってんだよ!重い!!」
「何、怒ってんだよ!」
「うるせー!!」


ああ、何だって!何だって、こんな喧嘩早くて、口の悪い奴が「女」なんだ!!


出来ればずっと知りたくなかった。知らないままでいたら、いつまでも俺たちは「相棒」のままでいられたはずなのに。








 ずっと、罪悪感を感じていたし、ちゃんとハンガリーが自分のことを女だと自覚して、オーストリアと同居するようになり、女らしさを増していくたびに、言葉にならないわだかまりばかりが胸を覆うようにプロイセンの中で募っていった。

 罪悪感なのか、それともこれはオーストリアに対する八つ当たり的な嫉妬なのか。

目を逸らしても、目の前にいる彼女が目を逸らすことを許さない。女だと、目の前の彼女が女らしくなっていくことに戸惑い混乱する。
 結局、自分は認めたくなかったのだ。自分が唯一、背中を預ける相手だと思っていた「相棒」が「守るべき者」だったっことを。悪態を吐きながらも、本音で唯一話が出来た、本気で喧嘩の出来た相手を未来永劫失ってしまった。

「…あーあ、ひとり楽しすぎるぜ!」

そう強がる以外、「彼」だと思っていた「彼女」のことを諦める術はプロイセンにはなかった。…ただ、ちょっとだけ寂しい気持ちになって、涙が出そうになったが、これで良かったのだと思うことにしたのだ。自分だけが知っていた秘密が公になったことで、罪悪感から逃れることが出来たのだから。



 …そう思おうとしてきたのだが、何故、こうなった?



「…なんで、お前、俺の上に跨ってんの?」

あの日の出来事が軽くフラッシュバックする。あの日見た僅かな膨らみは成長し、はち切れんばかりにシャツを押し上げている。それから、目を逸らそうにも馬乗りに跨られ、両の頬を掴まれ固定された状態では視線を逸らすことさえ難しい。それでも視線は逃げ場を求め泳ぐし、言葉はしどろもどろになる。押しのけることも簡単に出来るはずなのにどうしてもそれは出来ずに、クッションの端を掴んだままプロイセンは漸く、口を開く。
「ん?アンタがいつまで経っても行動に出ないから、こっちから行動に出てやってんでしょ!」
「は?」
「は?…じゃないっての!この鈍感!」
頬を掴んでいた手のひらが床に着いて、傾ぐ身体。長い髪が頬を擽り、それにプロイセンは目を細め、我に返ったように赤を見開く。
「…ちょっ、おま、顔、ちけぇ…」
間近に草色の瞳があって、プロイセンは焦る。じっと見つめられ、居心地がかなり悪い。何でこんなことになったのかと思い返してみるが、いつもの愚痴と八つ当たりと自棄酒の相手に付き合っていただけな気がする。ハンガリーが風呂に入るというのを見送って、そろそろじゃあ帰るかと食器とグラスを片付け、ハンガリーが風呂から出てきたタイミングで帰ろうとコートを羽織り、「じゃあな」と口を開いたところで何故か、押し倒されたのだ。
「…アンタさ、私が飲みに誘った理由解ってないでしょ?」
「…え?ロシアに対する愚痴をぶちまけられる相手が俺しかいねぇからじゃねぇの?」
プロイセンが素でそう返せば、ハンガリーは大仰に溜息を吐いた。
「…それもあるけど…。愚痴だけだったらさ、夜だし、一応、アンタ、男だし、女ひとりの自宅になんか呼んだりしないし、酒なんか勧めたりしないと思わない?」
「…そうだけどよ。…ってか、お前、俺のこと男だって意識してねぇだろ?俺だってしてねぇし、ダチってか、腐れ縁ってかそんな感じじゃねぇの?」
そうだと自分が思いこまなければやってられなかった。大嫌いな(…今はそうでもない)坊ちゃん側にハンガリーが着いたとき、事情は解っていても気に食わなかったし、ましてや、怒鳴り込んできたときには相当腹も立って嫌いになろうともしたけれど、出来なかった相手に良く解らないこのもやもやとした感情をぶつけることも出来ず、結局は鍵のついた箱の中にその感情を押し込んで、昔と同じままに接しようと決めたのだ。「女」だと意識しなければ、それは本当にスムーズにプロイセンはいつも通りでいることが出来たし、ハンガリーもそれを歓迎しているようにも思えた。
「…はー。…ま、そんな気はしてたし、私もその方が楽だったからそうしてきたけど…。…で、この状況、どういうことだか解るよね?」