輪る双子
「晶馬は、何処に行った」
「ん?それは僕にもちょっと分かりかねるよ」
今頃廃れた世界で泣いているのか、それともその存在自体を消してしまったか。
如何にせよ俺の答えは既に決まっている。
「だったら、俺にもそれは出来るのか?」
運命の乗り換え。
弟を取り戻すには、それしか方法がない。
お前が俺を守ってくれたように、今度は俺がお前を守るから、一人になんかさせないから、だから。
決意の炎を瞳に滾らせ、真っ直ぐと桃色を見上げた。
目を細めて、渡瀬は楽しそうに笑う。
「出来るよ、相当な対価を払えば、ね」
期待通りの言葉であろう俺の台詞に弾ませる表情、何時だってコイツは癪に障る野郎だ。
不敵に笑って、差し出された手にゆっくりと掌を重ね合わせた。
◇
「まったく、あの双子は本当に期待を裏切らないよねぇ」
そう、期待通りであって、とんだ期待外れ。
暗黒に包まれる世界で、一人ほくそ笑む。
「そうやって巡り巡ったところで、交わる事は出来ないのに」
なんて哀れで美しい。
愛とは時としてその身を滅ぼす、とはよく言ったものだ。
輪を辿る様に恋い焦がれ、そして手が届いたかと思うと幻であったかのように消えていく。
その繰り返し。何かを代償に運命を変えるとは、そういう事なのだ。
それがもう幾度となく行われてきた事に、果たして双子が気付く日は訪れるのだろうか。
「運命を輪り続ける双子、か。シビれるねぇ」
今頃どの運命に二人はその身を焦がしているのだろうか。
想像するだけでどうしようもなく血が躍った。