Love of eternity
2.
「……よぉ」
夜明け前―――まだ日が昇る前だというのに、処女宮の入り口で人の気配がしたため、シャカが向かうとそこには階段に腰を下ろしたアイオリアがいた。
いつもとは違って、アイオリアの小宇宙が僅かながら弱まっているのを感じたシャカはそっと目を開いて、アイオリアの状態を確認した。
「―――ずいぶん、傷だらけのようだが?」
よく見なくてもわかるほどアイオリアは顔面を腫らし、体に青痣も作っていた。
―――傷だらけの獅子か。
とシャカはアイオリアに届かぬほど小さく呟いた。尋ねずともわかる。昨日の雑兵たちとやり合ったのだろう。
「へへ、ちょっとな。小宇宙ではなく、拳で勝負してきたから」
情けなさそうに笑う獅子を複雑な表情でシャカが眺める。
「本当に呆れた男だ……」
「そうだな。俺もそう思うよ、シャカ」
さてと、と立ち上がったアイオリアはもう一度シャカのほうに振り返った。
「昨日はすまなかった、シャカ。それだけ言いたくてな。皆が起きだす前に戻るよ」
「もう、行くのかね?」
ああ、と短く呟いて階段を駆け下りようとしたアイオリアの背中にシャカがふわりと抱きついた。
「シャ……シャカ!?」
気が動転してアイオリアの声が裏返る。
「少し、じっとしていたまえ。癒してやる。この馬鹿ものが」
じんわりと背中に伝わるシャカの体温とともに優しく温かな小宇宙がアイオリアを包み込んでいく。
「―――強くあれ。アイオリア。誰もおまえを傷つけることができぬほどに」
「ああ」
「―――朝陽が登る。アイオリア。あの輝きに負けぬ光をおまえは持っているのだから」
「ああ……」
闇を払う曙光の眩しさに目を細めながら、アイオリアは真直ぐその光を見つめる。
その光の輝きの美しさと強さは、シャカそのものだとアイオリアは思いながら、静かに見つめ続けた。
Fin.
作品名:Love of eternity 作家名:千珠