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【Livly】誰も知らない物語

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落ち込んだ気分のまま、ルチルは島に戻った。
まさか自分が友達になろうとした相手が、モンスターだったなんて。
でも、すごく綺麗で、その姿をなかなか忘れられなかった。
次会ったとしたら、どんな対処をすればいいんだろう。元々頭を使うのは苦手である。すぐに考えるのにくたびれてしまった。

「でも・・・」

そして、ひとりごちる。

もう一度だけ、あの青を見て見たいな・・・



奇跡は起きた。

ルチルの島に大きな足音が響く。
振り向くと、あのジョロウグモがいた。
もう一度、ルチルの島に来たのだった。
まさか自分の言葉が現実になるなんて夢にも思わなかった。あの色、美しい青は変わらず、そして前よりもずっとひどい傷だった。
喜びと同時に、また襲われたらどうしようという恐怖が募る。咄嗟に身を守る体勢になる。
だが、ジョロウグモは突然崩れるように倒れていった。

「だ、だいじょうぶ!?」

返事がない。これだけ血を流しているのだから当たり前だが、馬鹿なルチルは気づかない。
そしてそのジョロウグモを追いかけるように、次の足音が島に響く。
ルチルは本能的に、ジョロウグモの体を必死に押して自分のねぐらの裏に隠した。
二番目の来訪者は赤いブラックドッグだった。

「ちょっと邪魔してるぞ。青いジョロウグモ見てないか?」

ルチルは黙って大きく首を横に振る。
その大げさな返事に、ブラックドッグは訝しげな表情を見せた。
彼の敏感な鼻は、向こうから血の匂いに気づく。

「きっとこの島にきたな。あれは俺が狙ってる獲物なんだ。よこしな」

「い、いないよ!モンスターなんて!!」

ブラックドッグは相当苛立った表情を見せた。
報酬を半分分けてやってもいいと言った。それでもルチルは譲らなかった。
どんなに聞き出しても「いない」の一点張りで、とうとうブラックドッグは怒鳴り声をあげる。

「いいからよこせ!!ここで雷でも撃たれてぇのか!!」

いつもだったら震え上がってしまうところだが、ルチルも負けじと叫んだ。

「モンスターなんて、いないよ!!」

そのとき、無意識に技を発動していたようだった。
「追い出し」の技で、ブラックドッグは強制的に島から落っことされた。
ルチル本人は、自分がまさか技を使ったなんて思わず首をかしげていた。
しかしその件については深く考えず、ねぐらの方へ走っていく。
無事守りきれた、という充実感でいっぱいだった。

ジョロウグモは気を失っていたが、呼吸はさっきよりも安定しているように見えた。
ルチルはとても安心して、優しく微笑んだ。
恐怖は既に、なかった。