【Livly】誰も知らない物語
もう一度だけ
リーダーの島にきたルチルは、驚きの声をあげる。
「リーダー・・・うわっ!」
目の前には小さなアリが倒れていた。
小さな、と言っても小柄なルチルには巨大な存在なのだが。
そのアリは血と共に体から大量の宝石を出していた。
既に息絶えているようだ。
「り、り、リーダー・・・」
どもりながらルチルは恐る恐るその塊を指さした。
リーダーは珍しく返事をした。
「見れば分かるだろ。モンスターだ」
「モンスター・・・?」
「お前、モンスターも知らないのか?」
ルチルは素直にうなづいた。
リーダーはそれに多少面食らったようだった。まさかここまで馬鹿だとは思わなかったので、説明をしてやろうと思った。
モンスターを倒して、気分が高騰していたのもあるが。
「大雑把に言えば、リヴリーじゃない奴のことだよ。最近この小さなアリのモンスターが大量発生してる。まあ小遣い稼ぎには持ってこいだな」
そして血塗れた宝石をためらいもなく拾い上げていく。
ルチルはあの青いジョロウグモのことを思い出して、血の匂いに頭がくらくらした。
「そ、そのアリさんたちは何かしたの・・・?」
「いや、こいつは小さいから別に襲い掛かってくるわけでもないな。」
悪気もなく言ったその言葉に、ルチルは怒りに近い感情を感じたが、リーダーは気づかずに続ける。
「でも、ほとんどのモンスターが無差別に襲ってくる。リヴリーとモンスターっていうのはそういう関係なんだ。生きるか死ぬか。それが天敵だ」
「天敵・・・」
言葉を繰り返す。そして考える。
(前会った青い・・・あの人も、モンスターなのかな)
あんなに綺麗だったのに。でも、襲ってきた。
「・・・お前、モンスターと戦ったのか?」
いきなりの問いかけに、ルチルはごまかしきれなかった。
でも、モンスターを助けようとしたなんて言ったらリーダーにもっと嫌われる気がした。
返事に困る彼だったが、リーダーは深く聞いてこなかった。
どうせサルみたいなチビには、このアリすら倒せないだろうというのが見解だった。
作品名:【Livly】誰も知らない物語 作家名:夕暮本舗