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願い事はひとつ。〈雪降る街で、そっと優しく・・・UP!〉

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願い事はひとつ。


栗髪の少女は夕食後、安宿屋にしては割と広めで小奇麗にしてある部屋のシャワーを浴び、ベッドで本を読んでいるときだった。
その部屋を照らし出している魔道ランプの光が、風もないのに不思議なぐらいに揺れ、炎は小さくなる。
部屋の中はほのかに薄暗い。
少女はそのランプを目を細めて見た。
「うん?おかしいわね・・・どうしちゃったのかしら?エネルギー切れ?
さすが、安宿ねー。うん、もーしょうがないわね。」
(あたしの魔力でも足しておけば、明日まで持つわよね?)
そう、思いながら、少女はベッドから立とうとした。
次の瞬間。
あれだけ賑わい隣接する客や宿の下のレストランで騒ぐ喧騒を感じていたのに、今や自分の部屋だけがどこかの異次元空間にでも隔離されてしまったかのように静かになった。
「・・・え!・・・何?この感じは!?」
不穏な空気を感じ、栗髪の少女の肌は総毛だった。
あまりにも、静か過ぎて耳が研ぎ澄まされる。
よく研ぎ澄まされた少女の耳に、聞きなれない音が聞こえてきたのだ。
それはヒタヒタヒタと、部屋の外から灰色の石のタイルを踏む音。
そして、少女の部屋の前でその足音はぴたりと止まった。
「な・・・なに!?何なの!?」
次の瞬間、青白い両手がぬっと扉から出てきた。
「ひっ!!」
少女はそれは間違いなく、『出た』と確信した瞬間だった。

「い・・・イヤ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!

 で・・・出タ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」

少女は恐慌状態に陥っていた。
そのまま、自分の枕をつかんで『出た』の方向に投げつけた。
さらに、呪文なしのファイアーボールも高速かつ連続してぶちかましていた。
あらん限りの力を使ってだ。

「来ないで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

耳をつんざく金切り声を張り上げていた。

リナの生理的に受け付けないもの中に幽霊が入っていた。

「リナさん!リナさん!」
不意に、両肩を捕まれた。
「リナさん!僕ですよ!ゼロスです!リナってば!!」
そして体を揺すられた。
リナはつぶっていた眼をゆっくりと開けた。
「・・・ゼ・・・ゼロス?」
「はい。そうです。」
張り付いた笑顔の獣神官ゼロスは少女の目の前にいた。
少女は見慣れた顔に、目をぱちくりさせた。
「いかがでしたか?僕の演出は?」
彼はいかにも楽しそうな感じで、指をパチンと鳴らすと、
リナの魔法によって破壊された部屋は、たちまちのうちに先ほどの平静を保った状態へと修復されていった。
魔道ランプにも彼の魔力が灯り、勢いよく燃え始め、部屋は明るく照らされたのだった。
自体を理解した少女は、徐々に頭に血が上り、手はこぶしを握り、体をわなわなとさせて怒った。
「ぜーろーすー!あんた・・・どういうつもりよ!
 ほんっとーーーに久しぶりに現れておいて!!
こんな夜中に一人旅をしているあたしを怖がらせようなんて、何のいやがらせなの!?」
少女はベッドの上であぐらをかいて腕組みをしている。
その少女の非難がましい目線に、青年は人差し指でぽりぽりと頬をかくと、にっこりと笑い。
「リナさんへのちょっとしたサプライズです。」
青年はチャーミングにウインクをした。
それを見て、少女はぷいっと顔を背けた。
「どうしてたのよ?この2年間。
 あんた、あたしの前に姿を現さなかったわね。
 あんまり久しぶりなもんで、あんたの存在を忘れそうになってたわ。」
少女はまるで母親にかまってもらえなくて拗ねている子供のようで、青年はそんな姿を見て心で心で小さく笑った。
「そんな、リナさん。
 ひどいですよ!たった2年会いに来なかっただけで、僕を忘れちゃうなんて!
 この僕は、片時もあなたのことを忘れなかったのに!」
青年は大げさにそのことを言うと、大きく手広げどさくさに紛れて少女に抱きつこうとした。
が、寸でで避けられてしまい、ベッドに倒れこんだ。
「ウソコケ!」
少女はベッドから這い出ると、そのまま窓際に備え付けられている椅子に座った。
青年は起き上がると、
ぺろりと舌をだし、
「ええ。冗談です。」と話した。
「でも、本当にとても忙しかったんです。
 だって、この2年間という時間に、僕は昼夜を問わず仕事漬けの毎日でしたから。
 まるで、100年分の仕事を一気に終わらせてしまったかのようでした。」
彼は少女の椅子に近いベッドの端へ腰掛けると、ゆっくりと眼を閉じ、
そして、淡々とその激務について青年は語り始めた。

どうせ魔族のやることなんてろくでもないことに決まってると、少女は決め込んでいたが、静かに語る青年に耳を傾けることにした。