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願い事はひとつ。〈雪降る街で、そっと優しく・・・UP!〉

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「と、いうわけなんですよ。ひどいでしょう!?リナさん!」
言い終わるくらいには、青年は興奮しきった状態になっていた。
熱弁をふるっていたため、こぶしを握り締めている。
よっぽど、ひどい境遇だったのだろう。
従うべき上司がいない自由の少女には、その苦労はわからなかったが・・・
リナはそっと窓の外を見た。
もう、窓の外からは呑み過ぎて大声を出している賑やかな人たちの声も聞こえない。
そろそろ夜の喧騒も終わりの時間だ。
自分の話を上の空で聞いている少女に怪訝な顔をし、青年が話しかけた。
「聞いてます?リナさん。」
ぼおっとしていたので、少女もびっくりし、慌てて青年の顔を見た。
「・・・え、ええ!もちろん!聞いてるわよ。
 酷いわね、こき使いようが。あんたんところの上司も。」
そして、おもむろに少女はおほんと咳払いをした。
「で、その忙しいあんたが、あたしのところに来るなんて。
 一体何しに来たの?」
窓から降り注ぐ月明かりに照らされた少女は、魔族の青年の顔をまっすぐに見ていた。
「まさか、あたしんところに世間話をするために来たわけじゃないんでしょう?」
青年はくすりと、笑う。
(さすが、頭のいい女性です。)そんな彼女を好ましく青年は思った。
「ええ。そのとおりです。
 実はリナさん。僕がここへ来たのも獣王様からの命令なんです。」
不穏な名前が出てきて、少女は眉間に眉を寄せる。
「ダークスターの一件やレゾに憑依した赤の魔王様の一件で、僕たち魔族はあなたに二度も助けられたでしょう?
 僕たちの手で解決すべき問題だったはずなのに。小さい人間の少女なんかに。
 なので、うちの上司たちが、そんなあなたの処遇について話し合いまして。」
「ゲ!」
少女は青年から出てきた言葉に、あからさまに嫌な顔をする。
「何それ!?
 あたしの処遇ですって〜〜〜!?」
 な〜んかそれって悪そうな響きじゃない?
 一体何の決定なのよ!
 そんなの予想がついてるわよ!」
少女は自分の前のテーブルをこぶしでどん!と叩いた。
「大方、あたしを抹殺せよとかなんとか言われてここに来たんでしょう!!」
警戒した少女に、
青年は困ったように笑うと、顔を振った。
「いえいえ。
 そんなことは決してないんです。
 僕がお約束します。
 獣王様直々に言われたんです。
 『そういう偉業を成し遂げた、小さき弱き人間に礼をせよ。』と。」
魔族の青年は満足げに話すと、にっこりと笑顔を栗髪の少女に笑顔を向けた。
「ええーーーーー!?」
「それって、お礼じゃなくて、『おとしまえ』の間違いじゃない?」
少女はあまりのうさんくささに聞き返す。
どうも、この青年が言うことは、いつもどこか信用できない。
今だって、そんな甘い言葉を言っておいて、次の瞬間には首を切られているかもしれないというのに・・・
不信感丸出しの少女の様子に、青年は焦った表情で言った。
「本当ですって!信じてください!!」
でも、目の前の青年は少女とは逆で、結構必死だ。
「僕たち魔族はですね、低俗な人間と違ってですね、そんな小さな嘘を吐いたりなんてしません!
 『すーこーな存在』なんですよ!」
と、青年は一気に捲くし立てた。
低俗な人間・・・。
少女はその言葉にちょっとムッとした。
(あたしもその低俗な人間なんですけど!ずいぶんな言い方ね!!)
「ま、そうね・・・あんたたちが崇高な存在かどうかは置いといて。
 あんたたち魔族は、確かに嘘はつけない属性よね。」
「そうでしょう。」
うんうん。
わかればよろしいとばかりに青年は一人で納得している。
「なによ、エラそうに。
 それで?」
「その崇高な魔族さんが、あたしにどんなお礼をしてくれるってわけ?」
「ええ。そこなんです!」
「なんでも、獣王様は『人間の欲しいものなんかわかるはずがないだろう。
 お前がリナとい娘に会いに行って、直接望みを聞いてこい。』と、仰ったんです!
 そこで、僕がこちらに出向いたという次第なんです。」
「へーそうなんだ。
 それで、2年ぶりに会うのに、あんな嫌がらせを?」
「いえ、それは僕の楽しみです。」
青年はきっぱり言った。
一人旅で、敏感になっているところに、ああいうのはないと思うが・・・と、少女は思ったが、
仕方ないと、青年の性格を考えて、まぁ諦めた。
「リナさん。
 何かひとつだけ、願い事を仰ってください。
 そうすれば、僕はたちまちにあなたの願いを叶えるでしょう。」
「絶対に?」
「ム・・・魔族に二言はありません。」
「嘘はつきっこなしよ。」
「くどいです。」
少女はテーブルに頬杖をつき、少しだけ考えると、
小さく(やっぱり、あたしの願いはこれしかないわ。)と、つぶやいた。
そして、テーブルに両肘をつき、顎を支えるように手を組むと、上目遣いで青年を見た。
「ねえ、ゼロス。
 あんた、あたしの一番欲しいものって何だと思うの?」
「え?なんですか?藪から棒に。
 僕だって、獣王様と一緒で魔族なんですから、人間の欲しいものなんてわからないですよ!」
「だって、あんたあたしと結構長く一緒に旅をしたじゃない?
 付き合いも長いんだからおおよそのことはわかるでしょう?」
少女はにこにこ笑顔だ。
青年が何を答えるか楽しみにしている。
青年は困った。
魔族にとっての望みはと聞かれるのは容易に答えられるが、
この飛び切り好奇心旺盛の強い少女の欲しいものなど、たくさんありすぎて選べない。
彼の上司には、『必ず一番に望むものを叶えよ。』と仰せつかっている。
だから、下手な望みは仕事の失敗だ。
魔族のこの青年は仕事に対してはまじめだった。
少女は相変わらず、無遠慮に自分の顔を覗き込んでいる。
「そうですねー・・・
 リナさんの欲しいものといえば、『たくさんの金銀宝石たち!!』・・・ではありませんか??」
魔族の青年はそういって少女をちらりと見た。
「ブブー!!はずれ〜〜!!」
少女はうれしそうだ。
「あんたも随分無難な答えを選んだわね?
 でも、残念。違うわよ〜。」
「ええーーー!!
 どうしてです!?
 人間の欲しいものなんて、大体こういうものなんではないんですか!?
 宝くじに当たって、億万長者になりたい!と、言っている人間たちが巷ではぞろぞろ蔓延っているじゃないですか〜!?」
なんと!違った!
(結構、いい線いってたと思いましたのに。)と、当てが外れて、青年はがっくりと肩を落とした。
「そうね。
 確かにそう。」
「あたしも、夢に見るわ。
 湯水のように使っても無くならないほどのお金を持っていること。」
「え?じゃあ!」
青年は一気に顔を上げる。
「でも、そうじゃないの。そうじゃないのよ。
 さあ、次は?」
「ではー・・・リナさんだったらどこでも使える特製魔族印入りレストランフリーパス!!期間限定100年!」
青年はこぶしを握り締めた。
し〜ん
彼は、胸の前で手を組み頭を傾げ、ちらりと食いしん坊の少女を見た。
「・・・あ、違いましたね。
 はは・・・」そして、ぽりぽりと頬を掻いた。
「あんた、あたしのこと馬鹿にしてるでしょう?黄昏よりも暗きものー・・・」
「わーわー!!!!!やめてください!!魔法は!!