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白石くんの恋人

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 恋人と一緒に住んでいる。そう書くと聞こえはいいのかもしれないけれど、実際は住んでいる、というよりは世話をしている状態だった。恋人はヒモではないけれど、俺がいないとどうしようもないのだ。恋人は12㎝しかないから。



 千歳は、12㎝しかない。12㎝というと、俺の携帯より少し大きいくらいだろうか。お菓子の空き箱に適当なタオルを引いた寝床でいつも寝ている千歳は、人形のようだ。ポケットの中に入るのがすきなようで、千歳が来てから俺の服にポケットがついているものが多くなった。

 朝、千歳にかけた厚めのハンドタオルを退けて起こす。まだ眠いと訴える目をこすって大きく伸びをして、おはようを言う。そばに置いてあるマグカップは千歳専用の風呂だった。少し冷ました湯を入れると、後ろを向いている間にちゃぷちゃぷと音が聞こえる。そっと振り向くと、マグカップのふちから黒くもじゃもじゃした毛がちょこんと見えていて笑ってしまう。別のハンドタオルで身体と髪を拭いた後は、ドライヤーの温風を弱にして遠くから当ててやる。ドライヤーの風に立ち向かおうと必死で踏ん張っている千歳を見ているとつい意地悪をしていまいたくなり、ふっと近づけたことがあった。結果は想像通り後ろにひっくり返って怒る姿がそこにあったのだけど。
 朝食は俺が食べているパンを反対側から勝手にちぎって食べている。ちゃんと千歳用に、と分けているのに、千歳は直接むしりたいようだ。最初は好きにさせていたが、サツマイモの蒸しパンを食べたときに反対側のサツマイモが全部無くなってからは総菜パンは分けるようにしている。

 千歳はいつもちょこまかとまとわりついているが、勉強しよかというとどこかの影に隠れてしまう。大抵それはギリギリ俺の視界に入る場所で、いつもほんの少しだけ顔を覗かせているからすぐに見つけてしまえる。それでも見つからないふりをして、一人で机に向かっていると千歳は裾をくいくいひっぱりに出てくる。手を差し出すとその上によじ登って大人しく机の上にいるのだった。

「今日は何の勉強すっと?」
「せやなあ…生物でもするか」

 正座をしたままゆらゆら揺れている千歳の後ろにある理科の教科書を引っ張り出した。つい最近授業でアンダーラインを引いた場所を、千歳が手のひらでなぞりながら読む。

「メン…デル…の法…則?」
「せやで」

 えんどう豆で有名な実験、遺伝子には劣性と優性があること、身近では血液型の話があることを話すと千歳は首をかしげて黙り込んでしまった。どうしたんや、と聞くと千歳は大真面目な顔をする。

「俺がAで白石がBやけん、子どもはABになるんかね?」

 思わず持っていたペンを落とす。大人しく聞いているな、などと感心していたというのに、相変わらず千歳は千歳だった。こいつは有性生殖の意味を分かっているのだろうか?子どもはな、と言いかけたとき、また千歳は口を開いた。

「だけん、俺は劣性ばってんOかね」

 あ、と思った。一瞬だけ変な間が流れる。俺は人差し指で千歳の頭を小突いて優性は優れているということではなく、遺伝子が表われやすいかどうかだと説明する。俺に髪をぐしゃぐしゃされた千歳は、笑いながら頭を押さえていた。その笑顔が本心なのかは、よくわからない。

作品名:白石くんの恋人 作家名:やよ