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白石くんの恋人

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 15時になると小瓶から金平糖を取り出す。千歳は黄色が大層気に入っているようで、いつも小瓶から黄色がすぐなくなる。味なんて全て一緒だろうに、そうでない色を渡すと少し機嫌が悪くなるのだ。俺にとっては小さなものだけれど、千歳にとってはそれなりの大きさなので、両手で持ってかじりつくように食べている。食べ終わった後は手も顔も砂糖でベタベタとしており、ウェットティッシュの隅で拭いてやらなければいけない。そのままにしておくと至るところが千歳の小さい手形だらけになるし、一度その匂いにつられてアリが行列になったとき以来俺も千歳も懲りたのだった。それでも金平糖を諦めなかったのは、何となくおかしい。
 千歳はビスケットも好きだった。もちろんそのままやるとビスケットの重さで倒れてしまうから、4つに割ったものをあげる。最近はクリームの挟まったものがお気に入りらしいが、食べるのが遅いので部屋の温度で溶けていってしまう。これもまた、千歳は手も顔も汚してしまうからウェットティッシュは外せない。千歳が来てから常備するものが増えた。

 千歳は食欲が満たされるとすぐ寝たがったが、健康によくないので無理矢理運動をさせる。テニスボールをバランスボールのようにして身体をリラックスさせた後、ペン立てを適当なところに置いて走らせる。このサイズの人間に一体どれくらいの運動をさせれば適当なのかは定かではなかったが、普段から全身運動をしているようでもあったから5往復ほどさせると休憩させた。走り終わった後の水分補給は、食玩のカップだった。千歳の好きな映画のキャラクターがモチーフになっているようで、千歳はこれじゃないと水を飲まない。ティーカップで水というのも変だったが、千歳が気に入っているのであればいいかと思う。中に水を何滴か落としただけでいっぱいになってしまうカップは、千歳の手にちょうどいい。

「ココア飲みたかー」
「ココアなあ…」

 千歳は別の食玩のカップを持ってくると、俺の前に置く。この中にココアを作ろうと思うと骨が折れるので、仕方なく自分のマグカップにココアを作り、少し分けてやった。甘ったるい匂いが部屋に広がる。スプーンの先にしずくをつけて入れてやると、千歳は食玩のカップをマグカップにこつんとぶつけた。

「何してるん」
「んー?乾杯」

 お揃い!もう一度カップをこつんとぶつけると、満足そうに千歳はココアを飲んだ。何だか恥ずかしくて、マグカップに口をつけるのが躊躇われる。しばらく立ち上がる湯気を眺めていた。

 夜は、また小さな食玩の皿に自分の夕食を分けていれる。玩具のフォークはあるものの上手く使えず、結局は手づかみになってしまうのでまたウェットティッシュの出番になる。動きまわって疲れた千歳は、夕食を食べると横になるといってそのまま寝息を立てることが多い。掛布団をかけて眠りにつく千歳を見届けてから、自分もベッドに入る。



「しらいし、しらいし」

 耳元で千歳の声がして、ゆっくり顔をむけると寝ていたはずの千歳が枕のそばに来ていた。ぶつからないように気をつけながら身体を起こそうとすると、千歳が手を広げ制止する。

「こっち向かんで、向こう向いて」
「なんやねん…」
「いいから」

 言われた通りに少し顔をそむけると、頬に千歳の体温が落ちる。これは千歳の唇の、温度だ。

「おやすみ」
「…おん」

 千歳は器用に壁を伝って、自分のベッドに戻って行く。布団代わりのタオルが盛り上がって見えた。



 千歳は12㎝になった。本当に小さい目で、口で、手で、足で、千歳はいる。12㎝の千歳は手のひらに収まるほどなのに、俺の手のひらから零れそうなほどの愛情をくれている。
 劣性、の言葉を思い出す。千歳は、どう思っているのだろう。12㎝でいることを俺は千歳が感じるままには想像できない。千歳の世界に、この部屋はどう見えるの。俺はどう映るの。千歳。俺は千歳がどんな形をしていても、きっと千歳は千歳だと思う。12㎝だって、120㎝だって、194㎝だって、きっと千歳は千歳だと思う。だからどうか、千歳は千歳でいることを忘れないで。そして千歳の世界に俺を映していて。ここに俺は俺のままでいるから。


 
作品名:白石くんの恋人 作家名:やよ