【ヘタリア/米英/腐向け】「いいふうふの日」なので
二人のものがあふれた空間で、二人だけの時間を過ごす。それがただ、嬉しくて。
一番早くおはようを言って、一番遅くにおやすみを言う。毎日、行ってきますと行ってらっしゃい、ただいまとおかえりなさいを交わす。一番多くを過ごして、誰よりも多く触れ合う。それが、幸せで。
「イギリス?」
「なんでもない」
大丈夫だと、心配するアメリカに答える。
帰る場所はここだと、すとんと心の深いところに落ち着いて、溢れそうになる涙をぐっとこらえた。
寝室について、二人でも十分に広さのあるベッドに壊れ物を扱うようにおろされる。アメリカ?と顔を上げれば、でれでれにゆるんだ顔を隠そうともせずにまっすぐイギリスと向き合った。
「イギリス。大好きだよ。大好き。好きじゃ足りないくらい、愛してるじゃ足りないくらい」
好き、と繰り返すアメリカにそっと笑って腕を伸ばす。首にまわした腕を引き寄せて、精一杯の気持ちを言葉に乗せた。
自分からなかなか言えない言葉。でも今は、あふれたものを押し出すように、するりと口から感情がこぼれ落ちた。
驚いたように顔を上げたアメリカは、ふにゃりと泣きそうに相好を崩して感極まったようにイギリスを抱きしめる。
「どうしようイギリス。好き。大好き。止まらないよ」
「止めなくて、いい」
止めるなと、口の端に柔らかく唇を落とす。夜は長いんだとはにかんで言えば、アメリカはイギリスを抱きしめたまま、ほうと暖かな吐息をはき出した。
「幸せ」
「あぁ」
「いい……?」
「……おう」
こくん、とイギリスが頷けば、アメリカは腰に腕を回してその体をベッドに横たえる。覆い被さって、見つめ合って、笑いあって、距離が急速に近くなる。
絡まる幸せの吐息ごと呑み込んで、そっと影を重ね合わせた。
END
作品名:【ヘタリア/米英/腐向け】「いいふうふの日」なので 作家名:黒部 @通販中