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京浮短編集

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シャンプー




「悪いなぁ、手伝ってもらって」
「なぁに見舞いのついでだもの、構わないよ」
 そう言うと京楽は、薄めた布海苔湯の入った桶に手拭いをつけた。軽く揺すって湯を含ませると、絞ったそれで浮竹の汚れた髪を拭く。
 いつもなら患いついても何とか一人でこなしている洗髪なのだが、こう長いと途中で疲れてしまうんだ、と浮竹は自分で持った手拭いで前髪を拭きながら言った。
「肩の辺りなんて、どこを拭いているのか分からなくなるよ」
「そうだねぇ」
 京楽は目を細め、また桶に手拭いをつけ、同じ動作を繰り返す。
「床上げしたら髪、切ろうかな。昔みたいにさ、な、どうだ」
「どうだ…って…えぇ〜なに一人で若ぶろうとしちゃって」
「違うよ、手入れが面倒だからに決まってるだろう。お前だって分かるだろ」
「ダメダメ、急にそんなことしたら頭から風邪引いちゃうよ。間違いないね」
「何だよそれ……そうだ、お前も切れば?少しはむさ苦しくなくなるぞ、きっと」
「あぁ〜いいねぇ〜二人で切っちゃおっか」
 笑い合って、京楽は浮竹の頭に布海苔つきの手拭いを乗せ、上から頭皮を掻いた。あらかた済ませると仕上げに乾いた手拭いで湿った髪を拭いていく。
「………あと何回、こうしてお前に髪を洗ってもらえるのかな」
「浮竹?……どうかしたかい」
「ほら、生きている間にする呼吸の回数って決まっているって言うじゃないか。それなら髪を洗う回数も、何もかも決まっているんじゃないのか、って思ったら急になぁ……いやすまん、つまらない話だ、忘れてくれ」
 京楽は手を止めず、そんな話を明るく言う浮竹の髪を拭き続けた。


  君がそうしろって言うなら、毎日してあげるのに ね。


 今更君のためだけに、なんて、どの口が言うのだろう。
「さぁ、できたよ」
 そう言ってできるのは、彼の旋毛に口付けることくらいだった。


 何もかも決まっているのなら、つまらない話でも覚えていなければならないのだ。






作品名:京浮短編集 作家名:gen