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運命の人 番外編(ランボ)

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見慣れてしまった煙の向こうに、見慣れてしまった人がいた。
「まあ、大きいランボちゃん。いらっしゃい、ちょうど今ドーナツ揚げたのよ。紅茶といっしょにツッくんのお部屋に持って行ってくれる?いっしょに食べてきなさいな」
10年前の幼い自分が、また遊んでいてバズーカを自分に打ってしまったらしい。
さっきまでいた世界で、さっき見た場面を思い起こすと、僕はため息が出そうになったが、どうにか押し殺した。
いつもの、伊達男を気取った微笑を浮かべ、良い子の返事をする。
「はい、ママン。御馳走になります」
トレイにセットされていたのはドーナツの大皿の他、ポットひとつにカップが2つ。それに自分の分のカップを足して3つにした。誰か来ているのだろう。僕の視線に、ママンが気付いてくれた。
「六道くんが来てるの。最近ツッくんのお勉強見てくれてるんだけど、随分熱心に教えてくれてるみたい」
「そう・・なんですか?」この時代、あまり接点を持ってないイメージが強いのだけれど。
「隣町から、週末にも放課後にも通ってくれてるのよ。真面目でお友達の面倒見も良くて、いい子よね。リボーンちゃんもだけど、あれくらいしっかりした子なら安心だわ」
それはどうだろう、という異論を喉で飲みこんだ。彼は不良少年と言ったらそこらの不良少年に失礼なくらいの悪事をしでかしてる人だ。ただ、ママンがそれを知る必要なんてない。僕は結局、黙って頷いて、トレイを持った。
階段を上がり、ドアを開ける。―――と。
目の前の光景に一瞬固まり、慌ててドアを閉めようとして、自分があらぬ誤解をしたことに気づいた。
とりあえずテーブルにトレイを置き、言うべき事を言った。
「ちょっと、若きボンゴレ、六道氏。ケンカしないでくださいよ・・・」
「あ、大人ランボ」
「はっ?ボヴィーノの子牛、君、状況を分かってていってるんですか」
六道氏は、若きボンゴレ、沢田綱吉に伸しかかった姿勢で―ここまでならラブシーンなんだけど―槍の穂先を突き付けたまま、僕に物騒な視線を向けた。その隙を逃さず、ボンゴレは六道氏を押しのけ、部屋の隅へ退避した。クッションで顔をかばうようにしながら、引け腰で言いつのる。
「骸、オレだって一生懸命やってるんだからさ、ちょっとくらい認めてよ・・・」
あれ、と僕は思う。この組み合わせがケンカしてたら、だいたい、悪いのは六道氏の方なんだけどな。
「一生懸命だろうが死ぬ気だろうが、来週の君のテストで全科目赤点回避しないことには僕と君の両方に風穴開けられることになるんです!公式をやっと覚えたと思ったら四則演算の計算順だの分数の割り算だの、小学生並のミスをするようなお粗末な頭に僕の命運を任せられる訳ないでしょう!?何もすぐに君の忠犬やら取り巻きやらを襲ったりしません、悪いことは言いませんから僕と契約してテストを僕にやらせなさい。命を惜しむ権利くらい僕にも君にもあるはずです!」
一息に言いきった六道氏の眉間の皺、必死な色がちょっと痛々しい。
なるほど、あの恐ろしい家庭教師が六道氏に、弟子の勉強を(きついノルマと重いペナルティを付けて)任せたということ。
僕も勉強は得意ではなかったし、彼に散々な目に遭ったから、ふたりの言い分はよくわかる。でも、この場はちょっと頭を冷やしたほうがいいんじゃないかな。
「あの、お二人とも、一回休憩して落ち着きませんか・・?」
そこで初めて、二人はママンの手作りおやつに目を留めた。通常のプレーンな小麦色のほか、ココア生地らしいチョコレート色の、2色のドーナツがこんもりと盛られている。言うまでもなく、ココア生地のドーナツは、代打の家庭教師への労いなんだろう。
「・・・・そうだな、骸、せっかくだから食べない?お前好きだろ、母さんのドーナツ」
「・・・・そうですね、お茶も冷めてしまいますし」
二人がお茶を口にし、それぞれドーナツをつまみ上げたのを見てほっとした。
テーブルについて座ると、何かが転がって足にあたった。死ぬ気丸のビンだった。
「あの、ボンゴレ。これ、闘うときしか使えないんでしたっけ」
ビンを掲げると、はた、とふたりは顔を見合わせた
「そうだ、前獄寺くんのダイナマイト消したりしたのって普通に死ぬ気だったし・・・・」
「君、たまには冴えてるじゃないですか。沢田綱吉、これをテスト期間全科目のテストに使いなさい!」
「そんなあ、すっげー疲れるんだよ!?お前は知らないだろうけどさ、マジ動けなかったりしたんだからな?」
よかったどうにかなりそうだ、と思った途端、煙に包まれた。いつも思うけれど、5分は本当に早い。

「おう、戻りやがったなアホ牛」
戻ってみると、獄寺氏に後ろから抱えられる格好だった。小さい僕が、騒いだのを抑えていたんだろう。
「はい、ただいまです・・ボンゴレは?」
「まだお母様とお話中だ。――――こればっかりはしょうがねぇ」
ドンの右腕はため息をついた。そう、この時代のドン・ボンゴレは、僕が飛ばされたとき、ママンからの電話を受けていたのだ。
以前恋人はまだできないのか、と母親に聞かれて、言いよどんだ反応で突っ込まれ、付き合ってるひとがいる、と言ってしまった・・・らしい。以来、是非とも息子の恋人に会いたいとママンが言うようになって随分になる。
ボンゴレだってお母さんに会いたいに決まっているのだけど、立場だけでなく恋人が問題なのだ。六道骸、同性であるばかりでなくファミリー関係者で指折りの問題児。彼らの交際については、僕ら守護者と家庭教師しか知らない。余計な波紋は広げたくないから。
「うん、ごめん、母さん・・・・いろいろ落ち着いたら、いつかは連れてくからさ・・・」
僕にとっては兄のようなひとが、苦い表情で取り繕う。言い尽くせないくらい惹かれあってるふたりでも、周囲が賛成するとは限らない。僕らも、ボンゴレと六道氏も、よくわかってることだ。
でも、ボンゴレ、僕はさっき、ママンから聞いたんです。彼女が、あなたの恋人になるひとを、とても好ましく思ってることを。
あの人なら、他でもない大空の母親なら、一人息子の選んだひとを、無碍にしたりはしないと思うんです。
あなたを育てた女性なら。
少し落ち込んだ表情で電話を切った、ドン・ボンゴレに伝えるため、背筋を伸ばして、・・・・自分の手を見た。
「あ・・・・」
僕は、死ぬ気丸のビンを、持ったままこちらに戻ってしまっていた。
(ごめんなさいボンゴレ、と、六道氏。どうかご無事で!)

10年前、同刻。