投げられた指輪
「リナさん。あなたから黒い闇は立ち去った。」
静かに青年は話した。
少女は片手で涙をぬぐった。
「あんたは本当に神官ね。」
隣にいる青年に笑いかけた。
「いいえ、僕はやっぱり魔族です。」
青年は苦笑した。
買いかぶりすぎないでくださいと言って。
「本当の神の神官ならば、過ちを犯したものたちの幸せを願うんでしょうね。
今のあなたのように。」
「しかし、今の僕はあなたがいなくなれば、彼らを八つ裂きにしてもし足りないくらいの衝動をここに持っているのです。」
そういって、左胸に指をさした。
「そうね、あんたはやっぱり神官じゃないわ。」
くすり。と、少女は笑う。
「でも、あんたはあたしに優しい。」
少女は泣き笑いだ。
青年もくすりと笑う。
「リナさん。
あなたには見えているはずです。
あの光が。
あの道へ進んでください。」
少女ははたと、顔を上げると、目の前は前いた白い世界へと戻ってきた。
「あたし、もう一度人生をやり直せるなら、あんたと恋がしたいな。
ふふ。あんたが魔族だから、それはそれで障害が大きそうだけど!」
「それ、本当ですか?
実は僕は結構モーションをかけていたんですよ?あなたに。
無視していたのは誰でしょう?」
青年の紫水晶の目とあった。
真剣なまなざしに、少女は目が離せなかった。
「バーカ。」
もう、遅いのよ。
過去を悔い、こうすればよかったなんて。
少女は青年の胸に包まれていた。
その優しい腕に栗髪の少女もその体をしっかり抱き返していた。
魔族の青年の胸に柔らかな少女の気持ちが流れ込んできた。
それはどのくらいの長さか・・・
二人にはわからなかった。
一分か、1時間か・・・
とても心地いいものだったから。
やがて、少女のほうが顔を上げた。
さらさらの絹のような黒髪が自分の頬に当たってくすぐったかった。
彼の胸でくすりと笑って、
少女は魔族の青年の顔をよく見ずに、離れた。
いつもの笑顔か。
それともまさかこの魔族の青年が泣いているのか。
確かめるのをとまどったから。
そして、くるりと後ろを向いた。
「さよなら。ゼロス。
あたし逝くわ。」
そして、少女は光の中のさらに輝く光を見据えていた。
少女はそこを目指して、柔らかな光に包まれた階段を駆け上がっていった。
やがて、その姿は光の中へと消えていった。
それを青年はいつまでも見送っていた。
「リナさん。あなたが生まれ変わるとき、僕はあなたに一番に会いに行きましょう。
それまでの間しばしのお別れです。」
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お疲れ様でした~!この小説をここまで読んでくださってありがとうございます!楽しんでいただけたでしょうか?
スウィートな感情がいまいち少ないわたくしのゼロリナ小説。(すみません。殺人ばっかりですね・苦笑)
今回は、『過去を乗り越えるという瞬間』をテーマに小説を書かせていただきました。
誰もが、つまずく恋の病。
みなさんはどうやって乗り越えましたか?
ちょっとみなさんの恋の病の乗り越え方知りたいです。
また、女性の愛というのはどういうものかを考えますね。
恋で一度も泣いたことのない女性はいないんです。
そして、女性の涙は美しい!
嫉妬ですらもです。
愛している人が他の女性と生きているということを考える時間は、乗り越えられなかった者に、どういう思いを与えるのでしょうか?
それはもしかすると、この作品のシルフィールのように狂気になりえるものをはらんでいるかもしれないということです。
愛と憎しみは紙一重。
恋は非常に難しいものですよね!
それではまたの作品でお会いいたしましょう。どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。