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嘘吐きは白い息と共に

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行き交うカップルの群れ、群れ、群れ。
手持無沙汰な俺は、無意識に目を走らせては虚しさを募らせる。
今日は彼らが主役と言っても過言ではない日だから仕方ないのだけれど。

はぁ、と吐き出す色は純白に染まり、雑踏に消えていく。
また一組、仲睦まじげなカップルが眼前を通り過ぎ、自然と目で追いかける。
しかし、そこに映ったのは腕を組むカップルではなく、見知った双子の妹の顔だった。


「兄貴、お待たせ。何見てたの?」

俺が向けていた方向に視線を走らせた後、愛らしい顔が一瞬にして曇る。

「また女の子?あーやだやだっ穢れるから近寄らないでよね、変態!」

しかめっ面で距離を取る妹の腕の中でかさりと音が鳴る。
ファンシーな袋の中には、愛するもう一人の妹へのプレゼントが包まれているはずだ。

「お前ねぇ…世の健全な男子高校生の頭ん中なんてな、99.9%アダルトな妄想で出来てんだぞ」

目を細めて笑うと、嫌悪感丸出しの表情で晶馬が一歩後退する。

「街中で何て事口走ってんだよ!しかもそれって兄貴だけでしょっ」

「ばっか、おまっ…山下見てみろ。あれがいい例だろ?それにどんな野郎だって少なからず下心は隠れてんだよ」

晶馬が何か考える素振りを見せてから、いやに納得した表情を作った瞬間俺は思わず口元を緩ませた。

「俺に言わせりゃ草食系男子なんて存在しねぇんだよ。男なんて皆狼だって」

「…だから男の人って、いやなんだ」

蔑む瞳を俺に向け、唇を尖らせる。
こんな純な晶馬だから、この歳になっても浮いた話の一つも無い。
それは俺にとって好都合だし、そう刷り込んだのは紛れもない自分自身なのだ。
この事を晶馬にだけは決して知られてはいけない。

「まぁそう言うなって。何れはお前もああやって一緒に歩いたりする男が出来んだろ。だから、」

「いい。いらない」

僕には、兄貴と陽毬さえ居れば何も要らない。
だから恋なんて、しない。

ぼそりと呟かれた声に、俺はぎくりと身を竦ませた。
ずしり、と石のように圧し掛かる言の葉に、俺は砂を噛むような思いに苛まれる。
妹の真っ直ぐに突き刺さる本音に、俺は置き去りにされた幼子のように気持ちを彷徨わせた。

そう言われたら、俺は一体どうすればいい?


ぎゅっと戸惑いがちに握られたコートの裾を見れば、その手は僅かに震えている。
晶馬は家族でいられる“今”が壊れる事を極端に嫌う。
俺が女と関係を持つ事を忌む根本的な理由が恐らくこれだ。
晶馬と、陽毬と、俺と。三人だけで過ごせる今が晶馬の全てなのだから。

作品名:嘘吐きは白い息と共に 作家名:arit