こらぼでほすと ケーキ2
おやつの時間に顔を出して、そこいらを切り出したら、「うーん。」 と、ニールも天井を見上げて唸った。本日のおやつはホットサンドとチェーン店のフライドチキンだ。外出していたから手抜きであるらしい。
「ティエリアと刹那か・・・・引き戻しに来るんだろうな。」
前後するように降りてくるという説明に、ニールは、そう結論する。いつもは互いにバッティングしないようにしているから、わざと顔を合わせるということは、そういうことだ。
「やっぱり。刹那は戻ると思う? ママ。」
ガブッとフライドチキンに齧りつきながらキラが尋ねる。ほかほかで香ばしい匂いに我慢できなかった。
「まだ無理だと思う。夏ぐらいにはって言ってたからなあ。」
「そうなると顔を合わせるのはマズイですね。」
刹那には刹那の予定があり、それを消化して宇宙に上がるつもりだろう。そうなると、ティエリアからの要請なんてものは聞くつもりもないだろう。緊急なら、わざわざ降りてまでティエリアが捕獲に来ることはないからだ。緊急コールなら、刹那も戻るだろうが、そうでないなら自分の予定をクリアーするのが、刹那の性格だ。
「ティエリアは明日なんだろ? 刹那が明後日だから・・・アスラン、あいつ、ラボで整備だけして、そのまま追い出せ。」
「え? 」
「逢わせたら五月蝿いだけだぞ? 」
「でも、刹那はニールの顔も見たいでしょう。少しくらい滞在させてやらないと。」
「まあ、別に、それでもいいけどさ。」
ニールは刹那が戻って来る意味がわからない。ただの補給と整備だと思っている。だから、こんなあっさりとしたことを言うのだが、それでは刹那が激怒するに違いない。
「でもなあ、たぶんエクシアの解体とか言い出すんじゃねぇーか? ロールアウトしている機体とエンジンのマッチングテストをするなら、エクシアの太陽炉も対象になっているはずだ。」
新しい機体の動力は、太陽炉が使用される。その太陽炉は、現在、五個しか存在していない。擬似太陽炉は、負の粒子を放出するものだし、それだとパワー的には連邦と互角になってしまう。純正の太陽炉を新しく作るには時間がかかる。そういうことだから、エクシアの太陽炉は、組織には必要だろう。必要だろうが、それで宇宙に上がるつもりをしている刹那は許可しないはずだ。『吉祥富貴』の機体は借りられない。それは、ニールも判断している。借りれば、こちらの戦力が低下するし、連邦に発見された場合、問題になるからだ。地球上なら、キラが散歩しているのだと言い張ればいいが、さすがに宇宙では、それもできない。キラは、地上に居ることは判明している。
「ティエリアの話を聞いて確認しないと、実際は、どうかわかんないけどな。そんなとこだろうぜ。」
ニールの言うことに、アスランも頷く。まあ、そういうことだろう。憶測でしかないので、実際のところは当人に確認するしかない。
「キラとも接触させないほうがいいってことですか。」
ラボの管理権限を握っているのはキラだ。エクシアの解体と言われてたところで、そこに入るには生体認証が必要で、それはキラが管理している。ティエリアも、簡単にラボに入ることはできない。
「うん、そのほうが無難だな。とりあえず、俺が話を聞いて報告させてもらうよ。」
「でも、刹那は? 明後日に戻るのに。」
「刹那は、ラボで整備の手伝いをさせておいてくれ。俺のほうから連絡する。それじゃダメか? キラ。」
「うーん、どうかなあ。」
「キラが刹那の相手をしてやればいいんじゃないか? その間に、ニールにティエリアのほうを確認してもらって、本当にエクシアの太陽炉の取り外しを言い出したら、刹那を逃がせばいい。」
エクシアは刹那の生体認証なしでは動かせない。あとは、組織のイアン・ヴァスティの生体認証がなければ起動もさせられない。エクシアの前に刹那を連れ出さなければ、太陽炉は取り外せないのだ。
「じゃあ、そういうことにする。」
「ティエリアは何時ぐらいになりそうだ? 」
「夜になると思う。」
「了解。」
「僕らは知らないことにするからね。」
こちらが動きを把握していたことは悟られないことにする。そうしないと、ティエリアの意図に気付いて刹那を逃したと判断されてしまう。だから、みな、知らないということで通すことにした。
いつもは、空港か宇宙港に迎えがあるのだが、秘密裏に降りてきたから自力で寺へ辿り着かなければならない。場所は把握しているが、公共機関なんてものは、ティエリアも、ほとんど使わないからわからない。どこの駅までモノレールで、そこから乗り換えて徒歩なんてことになると、かなり疲れた気分になる。刹那のように地上に定期的に降りて、一般人の真似もしていたら、そうでもないが、ティエリアは、そういう訓練は、敢えて受けなかった。これではダメだ、と、タクシーに乗り込んだ。
寺の近くまで辿り着いて、そこからは徒歩だ。ニールに渡すカードはカバンに入っている。フェルトからは花束を、と、依頼されているので、その日の前日に買い求めるつもりだ。期限は十日。ニールの誕生日の翌日には、組織に戻らなければならない。刹那は、その日には現れるだろうから、それから話をして、エクシアの太陽炉を確保するなら、もう少し滞在は延ばせる予定だ。とは言っても、ニールとのんびりできるわけではない。作業のほうにかかりきりになる。だから、ゆっくりできるのは刹那が現れるまで、と、腹は括っていた。
寺の山門を通り越して、家のほうへ入る。寺はオールセルフサービスだから、居間まで勝手に入る。そこには、のんびりとテレビを眺めているニールが居た。すでに時刻は店の営業時間だ。他には誰も居ない。
「・・・あ、おかえり。」
障子の開く音に気付いて振り向いたニールは、ちょっと驚いた顔をして、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「たっただいまもどりました、ニッニール。」
「連絡なしだったな? 寒いから、中へ入れ。」
立ち上がって飲み物の準備に向かいつつ、ティエリアにこたつを勧めるニールは普通だ。ティエリアはコートを脱いで、そのまま一緒に台所へ入る。背後から、ニールの様子を伺いつつ、話を切り出す。
「・・・今回はキラたちにも連絡なしに来ました。刹那は? 」
「戻ってないぞ。」
「そうですか。刹那に話があって直接、会いたかったのですが? いつ戻る予定ですか? 」
「さあ? まだ連絡は無いな。あいつ、年明けして飛び出したから、まだ戻るには早いんじゃないか? 」
「いえ、戻って来るとは思います。」
「そうか? 待ち合わせてるんなら戻るだろう。」
「待ち合わせてはいませんが、刹那が必要なことがあります。ですから、俺は、この時期に降りて来たんです。」
「この時期? アレハレの誕生日か? 」
また、この人は・・・と、ティエリアはわざとコメカミに手をやる。自分のことはスルーする人だが、自分の誕生日なんてものもスルーであるらしい。
「あなたの誕生日です、ニール。三月三日。刹那は、それに合わせて戻ってくるはずだ。」
「ティエリアと刹那か・・・・引き戻しに来るんだろうな。」
前後するように降りてくるという説明に、ニールは、そう結論する。いつもは互いにバッティングしないようにしているから、わざと顔を合わせるということは、そういうことだ。
「やっぱり。刹那は戻ると思う? ママ。」
ガブッとフライドチキンに齧りつきながらキラが尋ねる。ほかほかで香ばしい匂いに我慢できなかった。
「まだ無理だと思う。夏ぐらいにはって言ってたからなあ。」
「そうなると顔を合わせるのはマズイですね。」
刹那には刹那の予定があり、それを消化して宇宙に上がるつもりだろう。そうなると、ティエリアからの要請なんてものは聞くつもりもないだろう。緊急なら、わざわざ降りてまでティエリアが捕獲に来ることはないからだ。緊急コールなら、刹那も戻るだろうが、そうでないなら自分の予定をクリアーするのが、刹那の性格だ。
「ティエリアは明日なんだろ? 刹那が明後日だから・・・アスラン、あいつ、ラボで整備だけして、そのまま追い出せ。」
「え? 」
「逢わせたら五月蝿いだけだぞ? 」
「でも、刹那はニールの顔も見たいでしょう。少しくらい滞在させてやらないと。」
「まあ、別に、それでもいいけどさ。」
ニールは刹那が戻って来る意味がわからない。ただの補給と整備だと思っている。だから、こんなあっさりとしたことを言うのだが、それでは刹那が激怒するに違いない。
「でもなあ、たぶんエクシアの解体とか言い出すんじゃねぇーか? ロールアウトしている機体とエンジンのマッチングテストをするなら、エクシアの太陽炉も対象になっているはずだ。」
新しい機体の動力は、太陽炉が使用される。その太陽炉は、現在、五個しか存在していない。擬似太陽炉は、負の粒子を放出するものだし、それだとパワー的には連邦と互角になってしまう。純正の太陽炉を新しく作るには時間がかかる。そういうことだから、エクシアの太陽炉は、組織には必要だろう。必要だろうが、それで宇宙に上がるつもりをしている刹那は許可しないはずだ。『吉祥富貴』の機体は借りられない。それは、ニールも判断している。借りれば、こちらの戦力が低下するし、連邦に発見された場合、問題になるからだ。地球上なら、キラが散歩しているのだと言い張ればいいが、さすがに宇宙では、それもできない。キラは、地上に居ることは判明している。
「ティエリアの話を聞いて確認しないと、実際は、どうかわかんないけどな。そんなとこだろうぜ。」
ニールの言うことに、アスランも頷く。まあ、そういうことだろう。憶測でしかないので、実際のところは当人に確認するしかない。
「キラとも接触させないほうがいいってことですか。」
ラボの管理権限を握っているのはキラだ。エクシアの解体と言われてたところで、そこに入るには生体認証が必要で、それはキラが管理している。ティエリアも、簡単にラボに入ることはできない。
「うん、そのほうが無難だな。とりあえず、俺が話を聞いて報告させてもらうよ。」
「でも、刹那は? 明後日に戻るのに。」
「刹那は、ラボで整備の手伝いをさせておいてくれ。俺のほうから連絡する。それじゃダメか? キラ。」
「うーん、どうかなあ。」
「キラが刹那の相手をしてやればいいんじゃないか? その間に、ニールにティエリアのほうを確認してもらって、本当にエクシアの太陽炉の取り外しを言い出したら、刹那を逃がせばいい。」
エクシアは刹那の生体認証なしでは動かせない。あとは、組織のイアン・ヴァスティの生体認証がなければ起動もさせられない。エクシアの前に刹那を連れ出さなければ、太陽炉は取り外せないのだ。
「じゃあ、そういうことにする。」
「ティエリアは何時ぐらいになりそうだ? 」
「夜になると思う。」
「了解。」
「僕らは知らないことにするからね。」
こちらが動きを把握していたことは悟られないことにする。そうしないと、ティエリアの意図に気付いて刹那を逃したと判断されてしまう。だから、みな、知らないということで通すことにした。
いつもは、空港か宇宙港に迎えがあるのだが、秘密裏に降りてきたから自力で寺へ辿り着かなければならない。場所は把握しているが、公共機関なんてものは、ティエリアも、ほとんど使わないからわからない。どこの駅までモノレールで、そこから乗り換えて徒歩なんてことになると、かなり疲れた気分になる。刹那のように地上に定期的に降りて、一般人の真似もしていたら、そうでもないが、ティエリアは、そういう訓練は、敢えて受けなかった。これではダメだ、と、タクシーに乗り込んだ。
寺の近くまで辿り着いて、そこからは徒歩だ。ニールに渡すカードはカバンに入っている。フェルトからは花束を、と、依頼されているので、その日の前日に買い求めるつもりだ。期限は十日。ニールの誕生日の翌日には、組織に戻らなければならない。刹那は、その日には現れるだろうから、それから話をして、エクシアの太陽炉を確保するなら、もう少し滞在は延ばせる予定だ。とは言っても、ニールとのんびりできるわけではない。作業のほうにかかりきりになる。だから、ゆっくりできるのは刹那が現れるまで、と、腹は括っていた。
寺の山門を通り越して、家のほうへ入る。寺はオールセルフサービスだから、居間まで勝手に入る。そこには、のんびりとテレビを眺めているニールが居た。すでに時刻は店の営業時間だ。他には誰も居ない。
「・・・あ、おかえり。」
障子の開く音に気付いて振り向いたニールは、ちょっと驚いた顔をして、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「たっただいまもどりました、ニッニール。」
「連絡なしだったな? 寒いから、中へ入れ。」
立ち上がって飲み物の準備に向かいつつ、ティエリアにこたつを勧めるニールは普通だ。ティエリアはコートを脱いで、そのまま一緒に台所へ入る。背後から、ニールの様子を伺いつつ、話を切り出す。
「・・・今回はキラたちにも連絡なしに来ました。刹那は? 」
「戻ってないぞ。」
「そうですか。刹那に話があって直接、会いたかったのですが? いつ戻る予定ですか? 」
「さあ? まだ連絡は無いな。あいつ、年明けして飛び出したから、まだ戻るには早いんじゃないか? 」
「いえ、戻って来るとは思います。」
「そうか? 待ち合わせてるんなら戻るだろう。」
「待ち合わせてはいませんが、刹那が必要なことがあります。ですから、俺は、この時期に降りて来たんです。」
「この時期? アレハレの誕生日か? 」
また、この人は・・・と、ティエリアはわざとコメカミに手をやる。自分のことはスルーする人だが、自分の誕生日なんてものもスルーであるらしい。
「あなたの誕生日です、ニール。三月三日。刹那は、それに合わせて戻ってくるはずだ。」
作品名:こらぼでほすと ケーキ2 作家名:篠義