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こらぼでほすと ケーキ2

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 そう低めの声で言ったら、その人は、「あああーーー。」 と、思い出したように叫んだ。
「ああっっ、そうか。そういうことかっっ。ハイネェェェェェ・・・あいつぅぅぅ。」
「は? 」
 先日、ハイネの用事に付き合うために外出して、付き合ったバイト代だとセーターを貰ったのだ。ハイネの服を買うついでだ、と、言っていたので有り難く受け取ったのだが、プレゼントだとは思わなかった。
「もしかして・・おまえも、なんか渡そうとかしてんのか? ティエリア。」
 プレゼントなんて貰うほど自分は、まともではない、と、ニールは思っている。なんせ、元スナイパーでテロリストだ。そんな裏社会まっしぐらな自分が、ほのぼのと贈り物をしてもらうには、かなり罪悪感が募る。年少組は、日頃の世話のお礼だと言うから高額でないものは受け取っているが、それだって申し訳ない気分になっている。ちょっと真面目な声で言われて、ティエリアはカバンをぎゅっと抱き込む。
「・・・・フェルトとバカと俺の連名で花とカードを贈るつもりだ。」
「そうか。」
「本当は、もっと考えて贈り物をしたいんだが、考える暇がないし贈り物の準備もできないから、そういうものになっている。・・・ニールのようにはできない。」
 組織に居た頃のニールはマイスターやフェルトの誕生日には、ちょっとしたものを用意してくれていた。始動してからは、さすがに、そんな暇はなかったから言葉だけだったりしたが、それでも、何かしらはしてくれたのだ。それを受け取っていたフェルトやティエリアにしてみれば、できれば、何か探して渡したいのだが、いかんせん、再始動前の、この時期でも地上に降りて買い物するなんて余裕はないし、その時期は刹那の担当だったから、いままでも花を『吉祥富貴』のスタッフに頼んで用意してもらっていた。
「あなたが欲しいものなんて・・・俺たちにはわからないんだ。すまない、ニール。」
「・・・ティエリア・・・」
「誕生日の贈り物というよりは、いつも、あなたは俺たちのことを考えていてくれる、そのことへのお礼だと言い換えてもいい。」
 自分たちには、家庭的な生活の経験というのがない。だから、ニールのようにちょっとした贈り物なんてものを考え付かない。休暇の折に、何か用意しようと尋ねても、ニールは、「何もいらない。」 と、微笑むばかりで、ヒントもくれない。だから、花ぐらいしか思いつかないのだ。
「うん、ありがとな? ティエリア。それなら、花もいらない。カードだけでいいよ。それが一番嬉しい。」
 欲しいものは、たくさんある。だが、それは誰にも貰えるものではないものばかりだ。だから、口にする必要はない。子猫たちが無事に生きていてくれるだけで、ニールは満足だ。それ以上のものはないし、それ以上に願うこともない。毎年、カードだけでも贈ってくれるなら、それは生きている証拠でもあるから、それだけで十分だ。しかし、ティエリアは話をはぐらかされたと感じて、ぎっとニールを睨みつける。
「なぜ、邪険にするんですか? 俺は・・・できれば、この休暇にニールに何か贈りたい。」
「それなら、おまえさん、俺に本日の降下目的を正確に話してみろ。それを教えてくれたら、俺も欲しいものをひとつ教えてやる。」
「え? 」
「刹那に話したいことっていうのは、なんだ? 」
「それは・・・機密事項だ。組織を外れたあなたに話すことはできません。」
 機密事項で押し通すつもりで、そう言い放つが、それに相手は苦笑して目を細める。
「ということは、エクシアのことか? ロールアウトした機体に太陽炉のマッチングテストをするために、エクシアを寄越せってことじゃないか? 」
「なっなぜ、それを。」
「おいおい、ティエリア。現役引退したからってバカにすんなよ? それぐらいのことはわかるって。・・・・・なるほど、刹那にな。わかった。まあ、戻って来るまでゆっくりしてろ。」
 ほれ、お茶が入ったぞ、と、台所からニールは移動する。それにくっついてティエリアも居間に戻る。温かいココアの入ったマグを渡されて、それをこくっと一口飲む。ほわりとお腹から温かくなる感触に、かなり冷えていたのだと、自覚した。
「腹は減ってないか? 」
「・・・減っている。」
「リクエストは? 」
「なんでもいい。」
「ん、おやつの残りがあるから、それでいいな。」
 さっさと立ち上がったニールは、また台所へ引き返す。すぐに、温かいシチューとロールパンとサラダを用意してくれた。それを食べながら、ふと先ほどの会話を反芻して、ティエリアは顔を上げる。
「さっきの。」
「ん? 」
「さっき、俺は降下目的をバラされた。」
「ああ。」
「それなら、あなたも、欲しいものをひとつ教えてくれる約束だ。」
 スプーンを突き出して、真面目に迫ったら、ニールは破顔して笑い出した。なんとも可愛い反応なので、ニールはおかしくてたまらない。


「欲しいものか・・・一杯あるんだよなあ。大サービスで、いくつか教えてやるよ、ティエリア。一つ目は、マイスターに戻れるだけの健康、二つ目は、おまえらが無事に生きて俺に逢ってくれる時間、三つ目は・・・アレハレルヤたち自身を目の前にして誕生日を祝ってやる機会。・・・こんなとこだ。」
 それを聞いたティエリアは、ぽかんと口を開けて沈黙した。欲しいものだが、物量ではないものばかりだったからだ。どれもティエリアだけで用意できる代物ではない。沸々と怒りがこみ上げてきた。やっぱり、ニールは欲しいものなんて教えてくれる気はなかったのだ。
「ニールッッ。」
「俺、聖者じゃないから欲しいものは、たくさんあるんだ。けど、どれも貰えるものじゃないってだけだ。約束は守っただろ? 」
「俺が用意できる欲しいものを教えてくださいっっ。」
「んじゃあ、どうやって刹那と話すか言ってみな? そしたら、おまえさんが用意できる欲しいものを教えてやる。」
 その言葉に、守秘義務も機密事項も忘れたティエリアは、強引に刹那をラボに連れ出して、エクシアの解体をさせるつもりだということも吐かされた。そして、お返しに教えてもらったニール欲しいものは、「ティエリアと過ごす時間。」 だったので、呆れて笑ってしまった。
「そういうものではなくて・・・」
「でも、これって、おまえさんしか俺に与えられないだろ? 明日、買い物に行きたいからクルマの運転してくれないか? うまいもん食わせてやるからさ。」
 もうなんていうか、この人は、いつもこうだ。物欲がないわけではないというが、何かを貰うということはない。
「わかりました。俺の時間を差し上げましょう。他には? 」
「うーん、時期的にあんみつは売ってないから、おまえさんが好きそうなスィーツでも探してみるか。明後日は、ちょっとしたメシ会やるぞ。」
「メシ会? 」
「そう、当人不在の誕生日パーティーってやつ。特区にはさ、離れていて逢えなくても、その気持ちだけは送れるって考え方があるんだ。だから、盛大なお祝いをして、その気持ちだけ送ってもらうんだよ。」
「・・・もしかして・・・バカの? 」
作品名:こらぼでほすと ケーキ2 作家名:篠義