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こらぼでほすと ケーキ2

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「そう、アレハレルヤの。ティエリア、ちゃんと名前で呼んでやれ。あっちでくしゃみしてくれるからさ。」
 ニッと笑ったニールは、ティエリアの鼻を軽くツンと押す。生きているから、噂をしていれば、いつかひょっこり現れるかもしれないから、と、ティエリアも何度も、そう言われている。だが、ここまで気にしてくれていることが、嬉しい。たぶん、ティエリアが自分の誕生日を告げれば、同じ事をしてくれるだろう。
「ニール、そこまで、あのバカにしてやるなら、あなたもされても良いのではありませんか? 」
「だから、そのうち、当人を目の前にしてやるさ。」
「そうじゃありません。あなたのお祝いも盛大にやればいいと言ってるんです。」
「してもらってるよ。去年、ラクスや年少組から歌をプレゼントしてもらった。あれはよかったなー。」
「へ? 刹那は何を? 」
「刹那? お菓子くれたよ。俺の国で買ってきたって。」
 しかし、それはユニオンの菓子メーカーのものだった。アイルランドの百貨店に入っていた店のもので、人だかりがしていたから買ってきた。それでも嬉しかったので、ちゃんと食べたと、ニールはおかしそうに話す。
「じゃあ、俺も。」
「だから、時間をくれるんだろ? それでいい。」
「刹那は買ってきたのに、俺が買えないのは不公平だ。」
「・・・おまえさんね。」
「明日、あなたが好きなお菓子を買う。そして、当日に花とカードだ。フェルトたちと連名だから、これは受け取ってもらわなければならない。」
「まあいいか。じゃあ、明日、お菓子を買ってくれ。アイルランドのお菓子が売ってたはずだ。」
 大きなショッピングモールの輸入食材の店には、アイルランドの有名菓子メーカーのものが並んでいる。あれぐらいなら、高額でもないし、年少組も摘むだろうから、それを貰うことにした。
「よしっっ、フェルトにも教えてやろう。」
「・・・それじゃあ、おまえさんの誕生日も教えろよ。いつなんだ? 」
 ティエリアは、自分の誕生日を誰にも教えていない。実際問題として、誕生日というものがない。製造年月日とかマイスター登録した日というものはあるが、それすら口にしていなかった。以前、アレルヤと、それについては約束をしていたからだ。
「アレルヤが戻ったら教える。俺は、そう言ったはずだが? 」
「じゃあ、とりあえず、おまえさんも明後日、お祝いしよう。なんか欲しいものはないか? ティエリア。」
 そう問われて、ティエリアも言葉に窮する。そうなのだ。そう言われても、ティエリアも欲しいものなんてものが浮かばない。
「ない。」
「こらこら、こういうのは相互通行なの。どっちかだけっていうのはおかしいんだ。俺が貰うのに、おまえは貰わないっていうのは、不公平。」
「だが・・・俺には欲しいものなんて・・・いや、あることはあるんだが・・・しかし、それは。」
 欲しいものはある。アレルヤだ。だが、それは貰えるものではない。さらに言うなら、太陽炉も欲しい。それは製造するのに時間がかかるし、ニールから貰えるものではない。うーんうーん、と、唸っていると、ぽふっと頭を撫でられた。
「なあ? 誰かから貰える欲しいものなんてないだろ? そういうものなんだよ。明日、なんか気に入ったものがあったら教えてくれ。」
「わかった。」
 結局、ニールにはぐらかされているのだが、ティエリアも納得して食事に戻る。確かに、本当に欲しいものはお金で買えるものではないらしい。





 深夜に近い時間に、坊主とサルは帰ってきた。いつものように軽く夜食を食べて、悟空はさっさと寝床に走る。ティエリアは帰ってきたが、かなりの強行軍だったらしく風呂に入ったら、こてんと寝てしまった。慣れないことをしたから精神的に疲れたらしい。
「それで、黒ちびとの接触はさせないってか? おまえ、本当にロクデナシだな? 」
 晩酌をしつつ、今夜の顛末を女房から聞いて、坊主は人の悪い笑い方をした。そこまで聞き出して、逢わせないで逃がすというのだ。紫子猫は、それすら知らない。
「でも、ティエリアは、かなり強引です。荒立ててしまったら、再結集した時に問題になりませんか? 」
 今だけのことではない。これから組織は再始動する。その時に、刹那が組織に戻って、ティエリアと喧嘩になってもマズイだろうというのが、ニールの見解だ。そこに自分が居れば、取り成してやることもできるし、話を有耶無耶にすることもできる。だが、いかんせん、今のニールには無理なことだ。それなら、波風を立てないほうが安全だという考えだ。
「それほど、おまえの黒ちびは脆弱な神経だったか? それに、そういういざこざは、さっさとやっておくに限る。」
「ここで喧嘩させるってことですか? 三蔵さん。」
「ああ、そうだ。ここなら、おまえが居る。ここでやっとけば、後はさくっと話は通るだろ? 」
「そりゃそうだけど。」
「どうせ、黒ちびは帰ってくるんだ。あいつ、足止め食らわせたぐらいで戻らないなんてことはねぇーぞ? 」
 亭主の言い分に、ああ、そうか、と、ニールも理解を示す。確かに、地上で衝突してくれれば、ここでなら、どうにでも取り成してやれる。それに、黒子猫が、紫子猫との接触を避けるとは思えない。
「先送りにしても、同じことだ。それなら、盛大に喧嘩させたほうがいい。黒ちびだって、ここ二年で、かなり経験は積んだだろう。そういう対話もできると思うがな? 」
「そういうもんですかねぇ。」
「おまえの頭は、黒ちびが、いくつで止まってるんだ? もう二十歳になるんだろ? 」
「・・・・そうなんですけど。あいつ、言葉が足りない。」
「だから、これからは、おまえがフォローしてやれねぇんだから、その言葉足らずなとこも解消させねぇーとマズイんじゃないか。」
「そうですね。」
「いつまでも子供じゃねぇーんだぞ? おまえが過保護にしてやる必要なんかねぇーんだ。そろそろ親離れさせろ。」
「その場合、俺も子離れしないといけないんですよね? 」
 できるかなぁーと、女房は薄いお湯割りを飲みつつぼやく。すでに、黒子猫は、そういう意味での親離れはできているだろう。独りで、世界を放浪しているのだ。現地で見ず知らずの人間とも接触しているだろうし、そこで情報収集もしている。それなのに、言葉が足りないから、喧嘩になって心配だ、というのは、かなりおかしい意見だ。
「おまえは子離れしなくてもいい。戻って来たら、甘やかしてやれ。だが、それ以外の対外折衝は、てめぇーでやらせろ。亭主の命令だ。わかったな? 」
「・・・はい・・・・」
「だいたいな、橙バカの誕生日を祝ってやんのに、黒ちびを外してどーすんだ? せっかくなら、残ってるちび二匹に祝いをさせればいいだろうが。」
 せっかく、この時期に、二匹が揃っているのだ。祝いの気持ちを届けてやるなら、そのほうが、オレンジ子猫も喜ぶだろう。実際に届くものではない。それは、寺の女房も知っている。だが、何かしら届くのかもしれないという期待と、忘れていない、という気持ちだけは、それで埒が明くから、寺の女房も度々に陰膳を供えるのだ。

作品名:こらぼでほすと ケーキ2 作家名:篠義