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sweet and bitter

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「で、でもさ、なんか自分のために作る料理って手抜いちゃうんだよね。一人暮らししてて、自分のためだけに料理作るのってなんか面白くなくてさ」
「俺もそうだよ。今じゃほとんど自炊してないや。ついついコンビニ弁当とか、外食ばっか」
緑川はこの家のキッチンの様子を思い出して納得した。
「でも、ちゃんと栄養考えて食べなよ。ヒロトだって料理できるだろ?」
お日さま園では、当番制でご飯の準備を子どもたちが手伝っていた。器用なヒロトは料理もそれなりに得意だったはずだ。
「んー、でも一人で食べてもおいしくないし。スーパーで野菜買っても一人分って難しくて使いきれないし」
「あー、それは確かに。難しいよね。量の少ないやつはなんか割高だし」
突然、ヒロトは名案が浮かんだとばかりに眼鏡を光らせた。
「あ、じゃあさ。二人で食べようよ」
「へ?」
ヒロトの言葉の意味が一瞬理解できず、間の抜けた音が緑川の口からもれた。
「家は別だし、緑川は仕事もあるから朝と昼は無理でもさ。夕飯だけなら二人で一緒に食べれるだろ? 俺の家なら緑川の職場からも近いしさ。俺はほとんど家で仕事だし。当番制にしてさ。そうしたら食費ちょっと浮くし、なにより二人で食べればおいしいし。一石二鳥だね」
すでに決定事項のように、ヒロトは二人でこの食卓を囲む未来を楽しそうに想像していた。緑川は、すぐには返事できなかった。なにか自分に凄まじい選択を迫れているような気がして、安易に頷いてはいけないようながしたからだ。落ち着かず、視線がテーブルの下やマグカップや窓を行き来する。その時、視界に時計が入った。
「あ、もうドーナツがいい具合かな!」
不自然なほどに声が大きくなって、ガタッと大きな音を立てて椅子から立ち上がった。しかしヒロトは気にした風もなく、緑川の後を追ってキッチンへ向かった。
「ねえ、いっせーので、で一緒に開けない?」
ヒロトはまるでタイムカプセルを開ける前のように言った。
「いいよ」
二人でオーブンの取っ手に手をかける。
「いっせーの、で!」
宝箱を開けると、中から熱気があふれ出してきた。そして、その向こうからほのかな甘い香りが漂ってきた。中のドーナツがまるで黄金のようにきらきらと輝いて見えた。
「よし、上出来! ヒロト、お皿出して」
ヒロトが用意した皿に、焼きあがったばかりのドーナツをひとつひとつそっと並べていく。ヒロトが香りひとつ逃さないと言わんばかりに皿に顔を寄せるので、緑川は思わず笑って「火傷しないでね」と言った。
皿の上に文字通り山のようにドーナツは積まれた。宝の山だった。
「ちょっと作りすぎたかな?」
「余ったら、園に持って行けばいいよ」

焼きたてのドーナツを熱い熱いと笑って言い合いながら、二人でひとつのマグカップを替わりばんこにコーヒーを飲んだ。
作品名:sweet and bitter 作家名:マチ子