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石田ヤマトの決意と優先事項

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「こいつ一人でホテルふらふらしててさ。挙句昼間に女の子から逃げ回った所為か疲れてたらしくてうっかり休憩所でうたた寝してたら」
「襲われたと」
「そうそう。熱烈なキスかまされて大絶叫、みたいな」
「太一!!さっさと風呂入って来い!!!!」
「お、沸いたか。よしじゃあ賢、入るぞー」
「……え?」
「何してんだよ、さっさと入っちまうぞー」
「え!?あ、あの、僕、が太一さんと一緒に入るんですか…!?」
「不平不満文句は受け付けねぇからな」

にっこりと笑って太一はおろおろする賢をひきずったまま風呂場へと消えていった。
何となく無意識に、賢と一緒に入るつもりだった大輔はどうすべきかと迷っていたが、まあ、敵に攫われた訳じゃないしと素直に見送った。
まあ、大輔としてはどうせなら太一と一緒に入りたかったので、どちらかというと羨ましいという意識があったので素直にか、というと若干違うが。
賑やかな声が消えたところに、京がもしかしてと口を開いた。

「皆さん、賢くんの事、心配してたんですか…?」
「さあ、どうだろうな。ミミちゃんの意図は俺達には到底想像つかないから」
「ちなみに兄さん、男に襲われた後どうしたの?」
「………タケル」
「何?」
「折角話を逸らしたのに何で戻す?」
「兄さんって男にももてるんだってのがちょっと意外だったから。僕、男にもてるのは寧ろ太一さんだと思ってた」
「ああ、確かにそうだよなぁ。俺等にとってはやっぱ尊敬できる先輩だし、実力も半端ないし。俺にとっても勿論憧れの大先輩だ!」
「だよね。だからどっちかというとそういうアクシデントって太一さんのが多そうなのに」
「あいつは……」
「うん」
「あいつは、何故か、変なのに好かれないんだ……………」
「いや、それは無いでしょ。ねぇヒカリちゃん」
「うん、それは無いわ。どっちかというと変なのにこそ偏執的に好かれるタイプだもの」
「………………何か今物凄く複雑な気分になった」
「何が」
「いや、うん、なんでもない。まあ、あいつは大丈夫だよ。少なくとも学校では大丈夫だ。体育会系は上下関係厳しいからな。良くも悪くもあいつは先輩には結構好かれてるみたいだから」
「あ、成程。で?」
「どうしても蒸し返すのか」
「うん」
「……叫んだら相手が逃げて、で、まずいと思ったから俺も逃げて、それで終わりだ」
「ふぅん」
「なんだよ」
「つまんないなぁ」
「お前は俺に何を求めてるんだ」
「だって兄さんのそういう話を聞く事ってあんまりないし、せっかくだから色々聞いておこうかなと思って。ていうか、修学旅行とか行ってた事も知らなかったし」
「土産持ってきただろうが」
「何も言わなかったら普通に旅行行ってきただけなのかと思うじゃん」
「それもそうか。まあ、楽しかったぞ」
「それは何より」

改めて、変な兄弟だなぁと大輔達はぼんやり二人の会話を見守る。お腹も満たされたし、平和だし、なんかほのぼのしてきた。ヒカリだけは、若干複雑そうな顔をしていたが、そこに何があるのかはわからないので、傍観者に勤める。
気になるのはどちらかというと太一と賢の二人。
別に心配してる訳ではなく、純粋に気になる。

太一が、賢と二人だけで話をする機会は今までなかった。避けていたといってもいいかもしれない。いろいろあったから。いろいろあったけど、それを話す時間も無くて。ただ時間に追われるように戦いに引きずり込まれた。
でもそれも終わり。終わったから、こうしてゆっくりとした時間を手に入れた。

「ヤマトさんと太一さんは、賢くんと話をしにいらっしゃったんですか?」
「あいつはそうかもしれないが、どうだろうな。明確な意図を持って来た訳じゃないから。いつか話をしたいとは言ってたが、実際太一もどう接すればいいのか迷ってたみたいだからな」
「太一さんが迷ってたんすか?」
「そりゃ迷うだろ。子供の悪戯というには、一乗寺のやったことはあまりにも恐ろしい。が、あいつが全面的に悪いかっていやそうでもないし、まあ、感情の行き所が難しいんだろうなぁ」
「……ミミお姉様は、アグモンじゃなければ、というような言い方をしていました」
「アグモンの暗黒進化は俺達共通のトラウマの一つだからな」
「何があったのか、と聞いてもいいのでしょうか」
「それは本人に聞いてくれ。今なら隠しはしないだろうからな」
「今なら?」
「戦いの最中だったらきっとあいつは言わない。というか、ミミちゃんだって絶対に口にしない。そういう、不安要素のある話だからな」
「そうだね。あれは、怖かった。でも僕あの旅で出来たトラウマってそれだけじゃないけどなぁ」
「俺だって最大のトラウマは別の事だよ……」
「ああ………」
「私の最大のトラウマはお兄ちゃんに置いてかれた事よ」

にっこりと頬杖をついてヒカリが口にした言葉に、ヤマトとタケルがあからさまに固まった。

「今は仕方なかった事だってわかってるけど、あれは絶対に忘れられない。もし、あの時、私が選ばれていなかったら、二度目には耐えられなかったと思うわ」

例えば八人目が別の子供で。
例えば、現実世界での戦いを終えてもう一度デジタルワールドへと戦いに行く兄、達を。
例えば両親のように見守って見送る事は、きっと出来なかっただろう。
泣き喚いて縋りついただろう。
そうなっていたら果たして結末がどうなったのかは考えるだけ無駄だけど、でもヒカリはずっと思っていた。
だからこそ、自分が八人目だったのではないかと。

「ごめんね。でも、あの時もし太一さんが戻ってきてくれなかったら、僕等はきっとここにこうしている事は出来なかった」
「チームワーク皆無だったからな、俺達」
「威張ることじゃないよ兄さん。ていうか一番最初に諦めたのは兄さんでしょ」
「………うっ」
「実は結構薄情よね、ヤマトさん」
「仕方ないだろうが。あの極限状態でいつまでも生死不明な奴を探してたら俺等まで諸共に生死不明になる可能性あったんだから」
「それでバラバラになってたんじゃ意味ないよね……。でもほんと、あの時太一さんが戻ってくるのがあとちょっとでも遅かったらどうなってたかって考えるとほんとに怖いよ……………」
「だなぁ」

大輔達からしてみれば先代のメンバーはとても仲良く、チームワークもよければ、(今日みたいな)阿吽の呼吸という事をあっさりとやってのけるから、仲が悪い(?)というイメージが沸かないが、最初は随分と酷かったという事だろうか。最初は七人だった子供達。いきなり見知らぬ世界に放り込まれて、顔見知りではあるけれど特別に仲の良い訳でもない七人は、生きていくために必至だった。

「ちなみに」
「ん?」
「僕とヒカリちゃんを、最近呼ばないってのは、誰が言い出したの?」
「俺と光子郎」

ヤマトはタケルとヒカリを見据えた。
そこにあるのは弟への愛情でもなければ、友人の妹への友情でもなくて、何処か冷たい青。

「悪いな。俺達は俺達のリーダーが大事なんだ」

でもきっとそこには、絶対不変の信頼がある。