こらぼでほすと ケーキ3
「まあ、多少はあるだろう。組織の理念を蔑ろにするつもりはないが、関連するものについても考えるべきだとは思うようになった。」
これまで、いろんなところを旅してきた。その先で出会ったことが、組織だけを優先させるべきではないことを教えてくれた気がする。ニールが、一々、自分の考えを刹那に語っていたのも、そのひとつだ。憎しみの連鎖に囚われてはいけない。戦うことだけが全てではない。それらは刹那の胸に深く染みている。だからといって、刹那は、それをどうすればいいのか、まだわからないが、なんとなく淡いものは胸に燈っている。それが明確なものになるには、まだ時間がかかりそうだが、それは先ことをのことだ。今は、考えていることを前に進めるだけだ。
「・・・・なるほど・・・ニールの言う通りだ。」
「ん? 」
ティエリアも、刹那の変化に驚いたものの、それは受け入れられるものだ。マイスター組リーダーとして刹那は成長している。組織の再構築に従事した自分とは違う経験を積んでいる。だから、ふたりでやればいい。組織のことはティエリアが、外のことは刹那が担当すればいいのだ。ニールが刹那を放浪に出したのも、それういう経験を積ませるためだと言っていたが、確かに変っている。自分には、その時間がなかったことが残念だが、刹那が、そちらを担当してくれれば問題はない。
「刹那、エクシアのことは、君に預けよう。できるだけ急いで戻って欲しい。だが、アローズの調査は完璧にやってくれ。その情報で、俺は組織の再始動について予定を組む。」
「了解した。それだけか? 」
ティエリアの用件は、それだけか、と、刹那は確認した。そんなことぐらいなら暗号通信で済む程度でしかない。
「降下したのはエクシアの解体を考えてのことだ。・・・それと、ニールの誕生日を祝いたかったんだ。きみは、何か用意したのか? 」
この時期を選んだのは、刹那が確実に捕獲できるからだが、ニールにも何か贈りたかった。いつもは刹那が担当している時期だ。きっと用意しているのだろうと尋ねる。
「ああ、用意した。」
「何だ? 」
「おまえに言う必要は無い。」
「重なっては意味が無いから聞いている。」
「絶対に重ならない。」
ふっと笑って刹那は踵を返す。なんだ? その余裕の態度は? と、ティエリアは怒鳴りつつ後を付いて行く。結局、ティエリアは、アイルランドのお菓子をラッピングしてもらった。ニールが、それでいい、と、言ったからだ。当日に渡すつもりで部屋に置いてあるが、ちょっと物足りない。刹那が選んだものを参考にして、何か用意しようと目論んでいたのに、刹那は教えてくれるつもりはないらしい。そういうところは以前と同じだ。
作品名:こらぼでほすと ケーキ3 作家名:篠義