笑顔
頭上に広がる雲一つ無い青空。
こんな日に海の上に居たらどんなに気持ちいいだろう。
上に広がる青、下に広がる青――最高だ。
物心ついた頃から、雲一つ無い青空の度に思った。
船に乗った経験は無いけれど、海の上というのは気持ちいいに違いない。
どこか本能めいた部分でそう感じていた。
キンコーンカーンコーン―――
定番のチャイムが鳴り、俺の前を歩いていた先生が教室に入っていく。
よくTVやアニメにあるように呼ばれるまで俺は廊下で待っていた。
中からは「席に着けー」や、「静かにしろー」というこれもまた定番の先生の台詞が聞こえてくる。
そしてある程度教室から騒がしさが無くなった頃、呼ばれた。
「今日は転校生を紹介する。 入れ、」
「サンジです。よろし―――
「「「サンジーッッ!!!!!!!」」」
「・・・ぇ」
30人ほど居る生徒達の中の3人が立ち上がりサンジの名を叫んだ。
3人は3人とも目に涙を溜めているが、泣き顔では無く笑顔だった。
「なんで、俺の名前知っ―――
サンジーーー飯ーーーっ!!!!!―――
サンジ君―――
お前の飯は最高だなぁ―――
サンジー何か手伝うことないか?―――
美味しいわ―――
スーーパーーーだぁ!!―――
好きだ、お前に惚れてる―――
頭の中でめまぐるしく経験の無い記憶が呼び起こされる。
なぜ経験がないのに自分の記憶と思えるのか、
確かに子供の頃からの記憶はちゃんとあるのに別の自分の記憶が入り込んでくる。
一体これは・・・・
俺は今最高の気分だ―――
俺は世界一幸せなコックだ
この世界にはオールブルーを見つけたコックが居るかもしれねぇ
だが、俺はそのコックよりも幸せな自信がある―――
俺はこの船に乗れて本当に良かった
お前等と仲間になれて、一緒に航海が出来て良かった―――
ルフィに出会えて良かった
ナミさんに出会えて良かった
ウソップに出会えて良かった
チョッパーに出会えて良かった
ロビンちゃんに出会えて良かった
ビビちゃん、カルーにメリーにサニー、
フランキーに出会えて良かった
ゾロ、お前に出会えて良かった。―――
ありがとな―――
笑ってろよ、ずっと―――
「・・・・・・・っ!!!!!!」
「「「サンジっっ!!!!」」」
「・・・・ナ・・ミさん、ウソッ・・プ、 ゾロ!!!!!」
立っていた3人が名前を呼ばれたことで弾かれたようにサンジに駆け寄る。
ナミとウソップは思いっきり飛びつき、ゾロもそれに続こうとしたが、躊躇して1歩離れて照れたように笑っている。
突然蘇った記憶は己を混乱させるものではなく、
とても懐かしく、温かなもので心を包み込まれたようだった。
そして抱きついてきた2人に今日初めて着た制服を遠慮なく濡らされているが、こみ上げるのは喜びだった。
視線を横にずらせば安心する笑顔を向けられる。
おめぇも抱きつけばいいのに、
心の中でそう言うと、声には出さないが「バーカ」と言われた。
俺はニヤリと笑い手を伸ばす。
「ぅおっおいっ!!」
俺は抱きついたナミさん、ウソップの上からさらにゾロも抱きしめた。
遠慮なく思いっきり抱きしめてみる。
すると腕の中から、
「ギッギブだ!!サンジこれ以上は俺の鼻がぁっっ!!」
「あははっ苦しいっ!!」
「おっおい離せっっ!!!」
自然と出てきた言葉をそのまま口にする。
「ただいま。」
「「「おかえり。」」」
「おいコラお前等。」
「「「「・・・ぇ?」」」」
「知り合いなのはよく分かったからさっさと席に座れ。」
「「「「・・・・ぁ」」」」
「席に座れーーーー!!」
「「「「すみませんっっ!!!!」」」」
そう今はHR中。