こらぼでほすと ケーキ4
刹那とティエリアの話し合いは無事に片付いた。エクシアは解体せず、刹那が宇宙に上がる時に使用するということになった。エクシアについての変更が無いので、キラたちも翌日のメシ会には顔を出すことになったので、うきうきと寺へ足を運ぶ。
すでに、午前中からレイとシンは手伝っていて、台所は大騒ぎになっている。何をやりましょうか? と、アスランが手を出す。キラは、刹那がじゃがいもを潰しているので、そちらにちょっかいをかけている。家事能力皆無の子猫たちは、台所に居ると危険なので居間のほうで作業している。刹那はポテトサラダ用のじゃがいもを潰しているし、ティエリアはレタスをちぎっていた。子供の手伝い程度のことはさせられている。
「おう、アスラン。ローストポークの焼き加減とソースを任せてもいいか? 」
「オッケーです。」
すでにケーキの飾りつけ段階のニールは、そちらにかかりつきりだ。そちらにはレイが助手で張り付いている。シンと悟空は揚げ物を担当していて、あちっっ、とか、ふはっっ、とか声が飛んでいるからツマミ食いもしているらしい。
「ティエリア、それが終わったらプチトマトのヘタを取ってくれるか? 」
「はいっっ、了解です。これですね。」
レタスをちぎり終わったティエリアは、次にプチトマトだ。刹那のほうは、大量の茹でジャガイモに格闘している。唯一、この騒ぎに参加していないのは寺の坊主で、テレビの前に転がって柿ピーをアテにビールを飲んでいる。
「八戒さんたちは? 」
「大人のツマミの調達。トダカさんは、飲み物担当だ。」
ここにいないメンバーは、買出しに出ている。アイシャも午後からは現れる予定だ。あちらは、家のほうで刹那の好きな中東風魚のシチューを製作している。ケーキは三種類。生クリームたっぷりの白いホールケーキとチョココーティングのホールケーキは、中にたっぷりと果物が仕込まれている。もうひとつは、フルーツのタルトで、こちらはタルト生地の上に、フルーツがふんだんに盛られた華やかなものだ。予定では、ふたつだったのだが、ティエリアの祝いもついでにやることになって増えた。レイは、助手をしつつ、いちごやバナナにチョコトッピングしている。これも、デザートのひとつで、ようやくチョコの在庫が、これで終わる。
「刹那、次はタマゴを剥け。多少壊れてもいい。」
「了解した。」
ようやくジャガイモの粉砕を終わらせた刹那には、ゆで卵が渡される。ニールのポテトサラダは凝っていて、ゆで卵、炒めたタマネギとニンジンの千切り、きゅうり、ハム、千切りキャベツがミックスされる。栄養バランスを考えた結果、こういうことになっているらしいが、あまりパサパサしない食感で、坊主も食べられる。
全ての準備が終わる頃、沙・猪家夫夫とトダカ、アマギ、アイシャもやってきた。こたつだけでは席が足りないから、机を持ち出して、客間も障子を開けて居間を広くする。そこに、各種の料理が配置されると、ニールは大きな皿を用意して、ひとつずつの料理をちまちまと盛り付ける。
「ワインぐらいはつけてやろう。」
トダカが白と赤のワインを小さなグラスに少しずつ用意する。アイシャも魚のシチューを小さな器に盛り付けて、トレイに載せる。全部の料理を盛り合わせたら、坊主に視線でお願いをする。すると、坊主も立ち上がる。その後を、白黒ふたつのケーキを持った悟空たちが続く。
「ニール、このケーキは? 」
「それは、おまえさんのだ。」
フルーツのタルトはティエリアのケーキだ、と、ニールは言うのだが、どうせなら、これも、と、ティエリアが言うのでアスランが運ぶ。全員で本堂に赴くと祭壇に、ケーキ三種類と料理のプレート、酒各種などが供えられる。ティエリアは初めて参加するので、ニールの左側に座った。全員が、座ると、坊主は読経を始める。朗々と読経が聞こえている。となりのニールは、ぼんやりと祭壇を眺めているが、他は両手を合わせている。こちらの風習なのだろう。刹那はニールの右腕を掴んで祭壇を睨んでいる。一応、手順と意図は教えてもらった。実際に、これがアレハレの許へ運ばれるわけではないが、その念だけを送る。食べていなくても食べた気持ちになれるように、というものらしい。
・
・・・・・おまえたちが帰ってこないから・・・・・おまえたちが帰ってきたら、こんなにおいしいものがたくさん食べられるのに・・・・・ニールのおいしい料理が食べられないのは自業自得だっっ。俺に、こんなに心配させてっっ。何年すれば戻って来るんだっっ。バカッッ・・・・・
・
それを眺めてティエリアも内心で文句を言う。そして、どうか無事で生きていて欲しい、と、願った。自分たちは待っているのだ、と、気付いてくれ、とも思う。その気持ちが届けばいいと思った。
「てめぇーら、俺に感謝して食えっっ。このオオバカ野郎どもっっ。」
最後に坊主が怒鳴ると読経も終わる。そして、坊主が供えているコップのビールを一気に飲み干す。
「さんぞー、それ、ひどくね? 」
「念は送っちまったんだ。もういいんだよ。本当に食えねぇーのは、あいつが悪い。」
「ありがとうございました、三蔵さん。」
ニールも立ち上がって、深々と頭を下げる。いつも、こんなふうに送ってくれることに感謝はしている。何かの折に、度々に頼んでいるのだが、坊主は嫌な顔ひとつせずに、いつも送ってくれるからだ。
「腹が減った。さっさと食わせろ。」
「はいはい、マヨネーズもたっぷり用意してますからね。」
さあ、パーティーの始まりだ、と、料理のプレートを祭壇から下げる。これらも食べてしまうのが、坊主流だ。他のケーキや料理、飲み物も下げられて居間へ戻った。
歌姫様は仕事が入っていて、このイベントには参加できなかった。いくら仕事を福祉活動と音楽活動に限定しても、仕事はかなりある。本日は、ホテルの一室でインタビューを受ける仕事が三件あった。ひとつずつが、時間をずらしているので、インタビュアーの腕が良ければ早く終わる。合間にホテルのショッピングモールを散策していて、ショーウィンドウに飾られている時計に目が留まった。深い緑色の文字盤に銀色の文字と時計針、全体には黒で統一されたフォルムというシンプルなものだったが、ママの瞳を連想させる色の文字盤に心が動いた。
「ヒルダさん、この店に入ります。」
隣りに立っているヒルダに声をかけて、店に入る。ショーウインドウの時計を見せてもらえないか? と、声をかけると、店員は歌姫様に笑顔で対応してくれた。
「ラクス様、それは男物だが? 」
イザークが、それを見て声をかける。女性には大きくて厳つい感じの時計だ。歌姫様には似合わない。
「ええ、ママの誕生日が近いのでプレゼントですわ。」
「ニールのですか。なるほど、解りました。」
限定の時計で世界に200しかないものだと、店員が説明してくれる。電子機器の一切入っていない昔ながらの仕組みのもので裏側は一部透けていて内部の振り子が見えている。
「ラクス様、それは・・・」
すでに、午前中からレイとシンは手伝っていて、台所は大騒ぎになっている。何をやりましょうか? と、アスランが手を出す。キラは、刹那がじゃがいもを潰しているので、そちらにちょっかいをかけている。家事能力皆無の子猫たちは、台所に居ると危険なので居間のほうで作業している。刹那はポテトサラダ用のじゃがいもを潰しているし、ティエリアはレタスをちぎっていた。子供の手伝い程度のことはさせられている。
「おう、アスラン。ローストポークの焼き加減とソースを任せてもいいか? 」
「オッケーです。」
すでにケーキの飾りつけ段階のニールは、そちらにかかりつきりだ。そちらにはレイが助手で張り付いている。シンと悟空は揚げ物を担当していて、あちっっ、とか、ふはっっ、とか声が飛んでいるからツマミ食いもしているらしい。
「ティエリア、それが終わったらプチトマトのヘタを取ってくれるか? 」
「はいっっ、了解です。これですね。」
レタスをちぎり終わったティエリアは、次にプチトマトだ。刹那のほうは、大量の茹でジャガイモに格闘している。唯一、この騒ぎに参加していないのは寺の坊主で、テレビの前に転がって柿ピーをアテにビールを飲んでいる。
「八戒さんたちは? 」
「大人のツマミの調達。トダカさんは、飲み物担当だ。」
ここにいないメンバーは、買出しに出ている。アイシャも午後からは現れる予定だ。あちらは、家のほうで刹那の好きな中東風魚のシチューを製作している。ケーキは三種類。生クリームたっぷりの白いホールケーキとチョココーティングのホールケーキは、中にたっぷりと果物が仕込まれている。もうひとつは、フルーツのタルトで、こちらはタルト生地の上に、フルーツがふんだんに盛られた華やかなものだ。予定では、ふたつだったのだが、ティエリアの祝いもついでにやることになって増えた。レイは、助手をしつつ、いちごやバナナにチョコトッピングしている。これも、デザートのひとつで、ようやくチョコの在庫が、これで終わる。
「刹那、次はタマゴを剥け。多少壊れてもいい。」
「了解した。」
ようやくジャガイモの粉砕を終わらせた刹那には、ゆで卵が渡される。ニールのポテトサラダは凝っていて、ゆで卵、炒めたタマネギとニンジンの千切り、きゅうり、ハム、千切りキャベツがミックスされる。栄養バランスを考えた結果、こういうことになっているらしいが、あまりパサパサしない食感で、坊主も食べられる。
全ての準備が終わる頃、沙・猪家夫夫とトダカ、アマギ、アイシャもやってきた。こたつだけでは席が足りないから、机を持ち出して、客間も障子を開けて居間を広くする。そこに、各種の料理が配置されると、ニールは大きな皿を用意して、ひとつずつの料理をちまちまと盛り付ける。
「ワインぐらいはつけてやろう。」
トダカが白と赤のワインを小さなグラスに少しずつ用意する。アイシャも魚のシチューを小さな器に盛り付けて、トレイに載せる。全部の料理を盛り合わせたら、坊主に視線でお願いをする。すると、坊主も立ち上がる。その後を、白黒ふたつのケーキを持った悟空たちが続く。
「ニール、このケーキは? 」
「それは、おまえさんのだ。」
フルーツのタルトはティエリアのケーキだ、と、ニールは言うのだが、どうせなら、これも、と、ティエリアが言うのでアスランが運ぶ。全員で本堂に赴くと祭壇に、ケーキ三種類と料理のプレート、酒各種などが供えられる。ティエリアは初めて参加するので、ニールの左側に座った。全員が、座ると、坊主は読経を始める。朗々と読経が聞こえている。となりのニールは、ぼんやりと祭壇を眺めているが、他は両手を合わせている。こちらの風習なのだろう。刹那はニールの右腕を掴んで祭壇を睨んでいる。一応、手順と意図は教えてもらった。実際に、これがアレハレの許へ運ばれるわけではないが、その念だけを送る。食べていなくても食べた気持ちになれるように、というものらしい。
・
・・・・・おまえたちが帰ってこないから・・・・・おまえたちが帰ってきたら、こんなにおいしいものがたくさん食べられるのに・・・・・ニールのおいしい料理が食べられないのは自業自得だっっ。俺に、こんなに心配させてっっ。何年すれば戻って来るんだっっ。バカッッ・・・・・
・
それを眺めてティエリアも内心で文句を言う。そして、どうか無事で生きていて欲しい、と、願った。自分たちは待っているのだ、と、気付いてくれ、とも思う。その気持ちが届けばいいと思った。
「てめぇーら、俺に感謝して食えっっ。このオオバカ野郎どもっっ。」
最後に坊主が怒鳴ると読経も終わる。そして、坊主が供えているコップのビールを一気に飲み干す。
「さんぞー、それ、ひどくね? 」
「念は送っちまったんだ。もういいんだよ。本当に食えねぇーのは、あいつが悪い。」
「ありがとうございました、三蔵さん。」
ニールも立ち上がって、深々と頭を下げる。いつも、こんなふうに送ってくれることに感謝はしている。何かの折に、度々に頼んでいるのだが、坊主は嫌な顔ひとつせずに、いつも送ってくれるからだ。
「腹が減った。さっさと食わせろ。」
「はいはい、マヨネーズもたっぷり用意してますからね。」
さあ、パーティーの始まりだ、と、料理のプレートを祭壇から下げる。これらも食べてしまうのが、坊主流だ。他のケーキや料理、飲み物も下げられて居間へ戻った。
歌姫様は仕事が入っていて、このイベントには参加できなかった。いくら仕事を福祉活動と音楽活動に限定しても、仕事はかなりある。本日は、ホテルの一室でインタビューを受ける仕事が三件あった。ひとつずつが、時間をずらしているので、インタビュアーの腕が良ければ早く終わる。合間にホテルのショッピングモールを散策していて、ショーウィンドウに飾られている時計に目が留まった。深い緑色の文字盤に銀色の文字と時計針、全体には黒で統一されたフォルムというシンプルなものだったが、ママの瞳を連想させる色の文字盤に心が動いた。
「ヒルダさん、この店に入ります。」
隣りに立っているヒルダに声をかけて、店に入る。ショーウインドウの時計を見せてもらえないか? と、声をかけると、店員は歌姫様に笑顔で対応してくれた。
「ラクス様、それは男物だが? 」
イザークが、それを見て声をかける。女性には大きくて厳つい感じの時計だ。歌姫様には似合わない。
「ええ、ママの誕生日が近いのでプレゼントですわ。」
「ニールのですか。なるほど、解りました。」
限定の時計で世界に200しかないものだと、店員が説明してくれる。電子機器の一切入っていない昔ながらの仕組みのもので裏側は一部透けていて内部の振り子が見えている。
「ラクス様、それは・・・」
作品名:こらぼでほすと ケーキ4 作家名:篠義