千年王国
ゼロスはその凄まじい威力の頭への衝撃で、そのまま床に倒れ顔面を激しくぶつけてしまった。
「まぁ!ゼロス!!
お前はなんて失礼な男なんだ!!」
そして、その倒れて大理石の床にぴくついているゼロスを眼下に見下ろしながら、ウェディング姿の美しい女性ゼラスは腰に手を当て激しい表情で彼を見下ろしたのだった。
「あいたた・・・ゼラスさま〜ひどいですよぉお!」
ゼロスは痛む頭を抑えながら、女性を見上げた。
ゼラスを見上げると、彼女は左手には美しい白いブーケ。
そして、右手には、記憶の彼方にどこかで見たことがあるスリッパが握られており、彼の心臓はドキリとした。
「ちょっと、ゼロス。
あんたのその発言。
それは母親である私に喧嘩を売っているのか!?」
「ひぃ!」
「そんなに、そなた滅びたいのか!?」
その言葉に、ゼロスは肌を粟立たせ、首をぶんぶんと大きく振った。
そんなことぐらいで滅ぼされてはたまらない。
でも、この女主人は何をするか本当にわからないから。
「滅相もありませんっ!!」
大きな声で叫んだ。
ゼラスはいきなり消滅させられると言われて恐怖におののいている部下を満足げに見下ろし、口のはじをあげるとその姿を一瞥した。
そして、ゼラスは隣にいるまぶしすぎるぐらい真っ白のタキシードを着た輝くフィリオネル王子の逞しい腕にしっかりと腕組みをし、
その金目の眼差しは愛おしげに彼のりりしい顔をみつめた。
(ゼロスの目には、美人を目の前に鼻を伸ばしているただの親父にしか映っていない。)
「ごめんなさい。フィル様。
私の愚息があなたに本当に無礼なことを・・・。
私が息子に代わってあやまるわ。」
そして、ゼラスのしなやかな指は彼のごつごつした大きな手を握りしめた。
フィリオネル王子はゼラスの顔を見ると、悲しそうに彼女を見た。
「ゼラスや、ワシはそんなに君に似合わんかね?」
その言葉に、ゼラスは胸を打たれたように衝撃を受けた顔をし、
「いいえ!!
あなたは私にとって本物の王子様よ!!」
そして、ゼラスはフィリオネル王子の顔を両手で包むと思いっきりその顔にキスを落とした。
表現自主規制。
ばたーーーーーん!!!!!
その姿を見たゼロスはムンクの叫びのようなミイラの姿になり、後ろへと倒れこんだのだった。
「おや。」
「あら。」
しっかりと、両手を取り合った二人は倒れたゼロスを見て、くすりと笑ったのだった。