Da CapoⅨ
夜の窓辺
---夜は嫌いじゃない。
枕に頭をつけると、今日一日の事がぐるぐる回る。
進路。
音楽。
そして、
(君の声、君の音楽、君の笑顔)
俺は出されている宿題を机の上に放置してベッドに身体を預けた。
不安と夢と幸せと、まぜこぜになって体中を埋め尽くす。
早く明日になると良い。
又君に逢えるから。
(本当は隠しておいた方が良いのかな?俺の気持ち…)
自覚したのは、もう少し前だけど。
言葉にしなきゃいけないかもって思うようになったのは、一寸前くらいから。
(何でこんなに急いでいるんだろう…)
俺自身不思議に思う。
理由は分からない、見つからない。
でも、体を構成している細胞が俺をせかす。
早く早く、と。
「はっ、くしょん!」
誰かが噂をしているのかと一瞬思ったが、同時に身体が少し震える。
部屋の中が寒くなっている事に気が付いた。
慌てて上着をもう一枚羽織って、ベッドから身体を起こす。
(君に逢う時に体調不良とかありえないよね。
君と一杯喋りたい、一緒にいたい、だから…)
俺は窓に視線を向けて月を見上げる。
一杯考える事があって、今の俺には何が正解か分からないけれど。
でも、心の中にある君と言う音楽は、俺に幸せな明日を教えてくれる。
「おやすみ」
空に向かって、君に届くようにと柄にもなく祈りながら夜の挨拶をした。