Da CapoⅨ
浸透する夜
---夜はどちらかと言えば好きだ。
机に向かい、明日の準備をする。
思えば、明日は朝練があった。
早く起きなければいけないのだ。
空気が乾燥し、寒くなってくると準備運動も入念にやらなければあっという間に身体を壊す。
怪我は避けたい。
大好きなサッカーも、音楽も。
どちらも自分自身は続けたいから。
(それに…)
あいつの顔が浮かぶ。
コロコロ表情が変わる、しいて言えば、子犬みたいな。
純粋でまっすぐ。
か弱そうに見えるのに芯が強い。
一本筋が通っていて、とてもまぶしく見える。
この夜を小さく照らす沢山の星たちのように。
あいつの言葉や音楽はキラキラ輝いている。
時に一等星の様に。
時に六等星の様に。
でも、どこにいるのか分かる。
俺の心がまっすぐあいつに向かっている。
それを自覚せざるを得なかったのは、先輩の行動力だったかもしれない。
あの人は本当に良く動く。
正直に、心まっすぐ、迷わず。
だから、焦った。
(距離的には傍にいる筈なのに…)
その一歩が遅れたがゆえの焦燥感が俺を襲う。
(悩んでも仕方がない…)
溜め息をつく。
ふとあいつの顔が又浮かんだ。
「そんなに眉間にしわ寄せて溜め息とか…幸せが逃げちゃうよ」
耳の奥であいつの声が響く。
眉間にしわを寄せているのは「L」の方だろう、と苦笑したくなる。
考えても仕方がない。
これから、これから巻き返せばいいのだと自分を言い聞かせて。
朝練のメニューの確認をし、部屋の電気を消した。