Da CapoⅨ
海岸線の帰り道
偶々でも良いと、おれは思う。
元々違う歩幅と時間を過ごしているのだから。
吹いている潮風を体に封じ込める。
波に揺れたキラキラした大きな光は、空に小さい光へ場所を譲る。
おれはこの瞬間が好きだ。
自分の楽器を取り出して弾いて、どこかで弾いている君の音楽を追う。
指先が教えてくれる、おれと君の音楽の行方を。
何処までも繋がっている空の下で。
普遍的な音の集合体が、雄弁に語ってくれる。
伝えたい言葉を音に込めて。
君に届けと、祈るように。
祈るだなんて。
おれは、本当に強くない…と反省してしまう。
ふと君の声が聞こえた。
幻聴でも嬉しい。
今、おれと君の音楽が触れ合った瞬間だと勝手に思い込んで幸せを噛み締める。