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翔ちゃんが『セクシー』に挑戦しました

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む、難しい・・・・。
翔はこの日出された課題について頭を悩ませていた。
大好きな日向のクラスで、翔はいつも早くに課題を仕上げ提出するのだが、今回ばかりはそうもいかない。
ヴォイスレコーダーに録音した自分の歌を聴きながら、どうすればいいのか途方にくれてしまった。
今回の課題はセクシーに歌うことだ。
課題曲の音源に合わせて、自分の声を入れて仕上げるのだが、どうにも自分の声とセクシーが程遠く感じてしまう。
「と、とりあえず誰かにアドバイスしてもらおうっかな」
誰にも聞かれたくなくて、いつも一人になるために来る池の側にある芝生から立ち上がり、クラスメイトを探しに走って行った。

「あ、いたいた。おおーいレン」
いつもの通り周りに女生徒が群がっているので、すぐにお目当ての人物を見つけることができた。
「なんだいオチビちゃん」
「チビじゃねえっていつも言ってんだろ」
「レディ達の前で大きな声を出すなよ」
レンが彼女達へと視線を向けると、何やら『かわいい~』だの、『目がおっきい~』だの、『華奢~』だの、人の神経を逆撫でする声が聞こえる。
それは目の前のタレ目に当てはまる形容詞ではなく、となるとその対象は自分な訳で。
「わかったよ、チクショ。」
レンかれ見ればそこらの女子よりよっぽど可愛いのだが、そこは男のプライドがあって認める訳にはいかないらしい。
「で、わざわざ出向いてくれて、俺に何か用事かい」
女の子達には、ちょっとごめんねと言って場所を変えてくれる。
中庭にあるベンチへ腰を掛けると、翔は早速切り出した。
「今日の日向先生のクラスで課題出ただろ。もうやったか?」
「あー、あれね。レディ達に夢中になっていて忘れてたよ。思い出させてくれてサンキュ」
「忘れてたって、お前呑気だな。まあいいや。」
レンがこんな調子なのはいつものことだ。
「でさぁその、セクシーな声ってどうやって出すんだってのをちょっと聴きたくってよ」
「ああ、そのことね」
確かにこの友人ではセクシーさを表現するのは難しいだろう。
バカにしているのではなく、単にまだ早いだけだ。色々なセクシーさがあるのだから、翔らしく歌えばいいと思う。
他人のことにあれこれ口を挟むのはレンの主義ではないのだが、何故か翔に関しては少し違うらしい。
それにいつも全力で取り組む年下の友人を見るのは、案外嫌いではない。
「まあ、俺の場合はいつも美しいレディーを口説くつもりで歌っているのさ。こんな風にね」
レンはベンチの上から翔の肩を抱いた。そしてそっと抱き寄せ、囁くように歌い出した。
(な、なんだ?すごい・・・エロイ)
耳を愛撫されるような感覚を味わい、いつも聞きなれているはずの友人の声がとても淫靡に聴こえる。
おまけにこの体勢は、まるで恋人同士だ。
いけないことをしている様な気持ちになり、思わず耳に手を当てて後ろに飛びのいた。
「うあっ」
「おっと」
姿勢を崩してベンチから落ちかけた翔の背中をレンはとっさに抱えた。勢いあまって翔の上に乗りかかるような姿勢になったため、ハタから見ればレンが翔を押し倒しているような格好になった。
(こんな声と顔で口説かれて、落ちない女はいないんじゃないか)
至近距離で見るレンの顔がとんでもなく整っているのに今更気付いて、思わず観察してしまった。
「嬉しいこと言ってくれるねえ」
「え、俺なんか言った?」
どうやら思った事がそのまま口から漏れていたらしい。
「ははは、シノミーじゃないけど、オチビちゃんは可愛いね。ケガはないかい」
「大丈夫だ。あ、ありがとう」
ぎくしゃくと体勢を整え、ベンチに座り直す。
「取りあえず、参考にさせてもらうよ。俺にはちょっと高度すぎるけど・・」
後半は口の中でモゴモゴと呟く。
「そうかい。それならよかったけど。あっと悪いな、ちょっとヤボ用を思い出したからもう行くよ」
そう告げるレンの焦点は、翔を通り越して向こう側の廊下に合っている。
「おう、サンキューな、レン」
走り去るレンの先にいるのは、
(真斗か・・・?)
どうも妙な緊張感のある二人の間には何かがあるらしいが、翔にはそこら辺の込み入った事情はわからない。
ふう、と一息つき、さて次はどうしたものかと視線を巡らせると、背の高いふわふわ頭を見つける。
いつもは翔が気付くより先に那月がタックルしてくるのだが、誰かと喋っているようで、こちらには気付いていないようだ。
どうやら楽譜を見ながら話し込んでいるようで、あちらも課題についてのことだろう。
話している相手は翔も知っている相手で、作曲専攻の那月のクラスメイトだ。
「でね、ここはこういうメロディーだとどうでしょう」
そう言って那月はメロディーを歌い出す。
それはいつもの那月の声より少し硬質で、後ろで聞く翔の心臓がドキンと音を立てる。
(那月の声って、イイよな)
ドキドキが止まらなくて一人でうろたえていると、肩越しに翔に気付いた友人の羽鳥が翔に声をかけた。
「あれ、来栖くんじゃない」
「おォ奇遇だな!」
動揺しすぎて、無駄に元気に挨拶している自分がうらめしい。
「翔ちゃん後ろにいるなら声掛けて下さいよ」
「いや、掛けようとしたんだけど、お前の歌が聞こえて、タイミング逃したんだ」
「あ、さっきの聞いていたんですか。どうでしたか」
「ちゃんと聞こえた訳じゃないけど、かっこいいと思うぜ」
「わぁ羽鳥くん良かったですね」
「うん。四ノ宮くんのメロディーは僕のイメージにぴったりだよ。あ、来栖君、この後時間ある?」
「えっと俺も課題があるから1時間くらいしか取れないけど」
「もし良かったら、僕の曲を四ノ宮君と一緒に歌ってもらえないかな」
「いいけど、これ那月と作っているんじゃないのか」
チラと那月を伺うと、ニコニコしている。羽鳥がいいならいいということなのか。
「そうなんだけど、今二人が並んでいるのを見て、イメージが膨らんだんだ。あーすごく楽しい。早く行こう」
羽鳥は既に頭の中で音符が浮かんでいるらしく、手をうずうずさせている。そしてメロディをブツブツ言いながら足早に二人の前を歩いていく。
二人もそれに続きながらレッスンルームを目指す。
先程チラリと楽譜を見たが、曲は半分以上出来ているようだ。多分最後の終わり方をどうするかで迷っていたのかもしれない。
「わーい。翔ちゃんと一緒に歌えますね。羽鳥くんの曲、とっても素敵なんですよ。翔ちゃんもきっと気に入ると思います。ところで翔ちゃんの課題って何ですか」
「俺の課題はさ・・・歌なんだけど、ちょっと苦戦してるんだ」
「めずらしいですね。いつも早くできていましたよね」
「それがさ、日向先生がセクシーに歌ってこい!って言ったんだよな。俺そういうの得意じゃなくて」
「そうですねぇ。翔ちゃんは小さくて、誰が何と言おうと可愛い系ですしねぇ」
ちょっと気の毒そうに頭を撫でるのは勘弁してほしい。
「俺だって、そんくらい自分で分かってるけどさ。もうちょっと野性的というか、カッコよく歌いたいんだけど」
「あー。そうですね、大丈夫だと思いますよ。僕にちょっと考えがあるんですが、これから羽鳥くんの曲で試してみましょうか」
人差し指をピンと立たせて、那月が頬をピンクに染めて笑っている。